◎ Batuichi end ◎
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みんなを一箇所に集める。
恋薬を被った人間全部を一堂に集める、最も効果的な方法は、皆の求めてやまないスネイプに目の前を横切ってもらうことだ。

箒に乗って学校中を飛ぶ。
シリウスがドアを蹴り地下牢教室を出る。
それに合わせアクシオを唱え、箒を取り寄せる。教室になだれ込んできた奴等にスネイプを見せ、じらすようわざわざ彼を引っ張り上げ、回した手で軽く背中を叩き、抱きしめたように見せてから後ろに乗せる。
天井ぎりぎりまで上昇し旋回してから廊下に出た。
最初にスネイプの指示に従い温室へ。
温室にいる眠った三人を起こす。
低い声で目覚めの呪文を唱えるスネイプ。薔薇の鉢の間からむっくり起き上がった奴等は、スネイプと自分を見ると、突っ込んできた。投げつけられる呪文をかわし、そのまま逃げる。次に空き教室で眠っている少女にも、スネイプは目覚めの呪文を唱える。図書室では半分だけ残ったドアに『ドア修理中』の張り紙があった。
学校中を、スネイプをのせて飛ぶ。あちこちで姿を目撃させる。そのうち、自分たちの後ろを、箒に乗った集団が追いかけるようになる。よく見ると、先頭は、クィディッチ・スリザリンチームのシーカーだった。
「掴まってて」
「……」
無言でスネイプは腰に手を回してくる。
二人乗りで最高速度は出せないだろうが、後ろを行く奴にローブの端を触らせることはしない。
体を倒しスピードを上げる。
学校内での障害物競走だ。
上へ下へジグザグに飛ぶ。
直線コースの廊下を駆け抜け、閉じる瞬間の、動く階段、隙間をすり抜ける。
背中のスネイプがぎゅっと手に力を込めながら、早すぎるポッター目的を忘れるなと怒鳴り、自分たちが囮だと思い出す。
付かず、はなれず、みんなを誘導しないといけない。
突如はるか前方から、マクゴナガル先生の声が轟く。
「ジェームズ・ポッター! セブルス・スネイプ! ミルドレッド・ファーマシー! アラン・スミス!―皆、今すぐ降りてきなさい!」
廊下で箒は禁止だ。しまった、見つかった。
箒の柄を上へ向け、先生の手前の角を曲がる。
後続の奴等も自分に倣えで次々続く。
杖を振るって窓を開け、外へ出る。
風景が尾を引き、すり抜けるように後ろに消える。まるで自分が光になったような錯覚が起きる。
背中に当たるスネイプの鼓動が、どきどきと激しい。
後ろをみると、だいぶ遠くに団子状の集団が見える。
わざとらしく見えないように少しスピードを落とす。

ローブの裾をはためかせ、クィディッチ競技場を目指す。
集団を引き連れて行儀良く、一列に並んで入り口から入場。

競技場では、ピーターが、スネイプの解毒剤入り風船を所定の位置に浮かべている。大鍋を二つ合わせたほどの大きさのそれは、金色に塗ってある。青い空に浮かべると、不思議と溶け込み分かりづらい。
素早くスピードをあげ、急上昇しその後ろに回りこむ。
次々と流れ込んでくる箒の集団たちは急に見えなくなった自分たちを探しうろうろしている。
「どう?これで全員そろった?」
問いかけに背中のスネイプは、こちらの肩を掴み、そっと腰を浮かせた。
「……だいたいあれで全部だと思う」
「じゃあ、後は打ち合わせ通りに」
「分かっている」
スネイプが杖を取り出す。口の中で小さく、聞き覚えのないフレーズを唱える。
韻を踏む、歌のような呪文をスネイプは詠唱する。

つん。

杖の先で風船をつつくと、風船はむくむくと膨らみはじめる。
「いくぞポッター」
ぽんと背中が叩かれる。
あとは時間を稼ぐだけ。再び急降下して競技場の内周を回る。
目ざとい奴等が追ってきて、またしても追いかけっこが始まる。何週か目には前から、網を持って突っ込んでくる奴もいる。すんでのところでかわす。
人数が多い。予想よりコンビネーションが取れている。
ハイスピードで飛べればまだしも、このままだと捕まる。
頭上を見上げると、風船は予定の半分の大きさ。
「危ない!」
スネイプが叫び、箒を横に倒した。
見慣れた茶色の固まりが、目の前をかすった。
唸りを上げてブラッジャーが通り過ぎる。
誰かが暴れダマを放したんだ。
背後から手を回しスネイプは箒の柄を下に向ける。
降下する箒、間を置かずしてまたブラッジャーが……。
すんでのところでそれを避ける。どこからともなくロープがスネイプ目掛け飛んでくる。とっさにうでを出した。ロープは躊躇することなくこちらの腕に絡み、箒から自分を引きずり落とそうとする。スネイプは杖先に炎を表し焼き切った。
人が、多すぎる。囲い込む敵に、飛び交うブラッジャー……。
風船は、………あともう少し。もう少しで予定の大きさ。
あと、もう少しだけ時間を稼げれば……。
「もう、いいポッター……私を降ろせ」
周囲を見回しながらスネイプは言った。
「奴等の狙いは私ひとりだ。私を奴等に引き渡せばお前は無事に帰れる」
「何、言ってるんだ?」
「元はと言えば私のまいた種だ。自分でまいた種は自分で刈り取る」
「……カッコイイこと言ってるけど、奴等に捕まったら、何されるか分かってる?チューじゃ済まないかもしれないんだよ?それに、あんまり俺を見くびらないで欲しいな……」
前触れなくジェームズは箒を降下させる。箒は重力に引かれ落下していく。スネイプは悲鳴を飲み込みぎゅっとジェームズにしがみ付いた。
落ちる、落ちている。
四方八方から、ロープやら網やらが投げかけられる。あっと驚いた顔をして駆け寄るものたちもいる。
ブラッジャーの間をすり抜け、落ちながらジェームズは箒を競技場の中心へ向ける。
一同を、風船の真下におびき寄せている。
地面に激突する瞬間、ジェームズは箒を立て直す。土ぼこりを上げ地面すれすれに舞い降りる。その上から幾重にも、網とロープ。

捕まえたと誰かが叫ぶ。

万事休すか……。

投げかけられる網から抱きかかえるようにして庇ってくれるジェームズの腕の中でスネイプは思った。

「シリウス!」
突然ポッターは叫ぶ。
みると、入り口上、スタンド席、一番上の座席に人影が二つ。足をかけたシリウス・ブラックと箱を抱えたピーター・ペティグリューがいた。シリウスは片手にバットを持って、じっと空の一点を睨んでいる。おもむろに彼はピーターに向かう。ピーターは足元の箱から、クワッフル(と思われる色の球)を取り出し手渡す。
シリウスは音もなく、垂直に球を放り上げる、そしてバットを構え打った。

カキーン

気持ちの良い音を立てて球は一直線に風船に向かって飛ぶ。

ぱああーん

風船が弾け、中から大量の水が降る。

きらきらと陽の光をはじくものに、一同の視線は釘付けになった。そしてあっと思うまもなく皆の頭上に降った。

解毒剤の雨。

瞳をピンク色に血走らせた人々は、雫を滴らせながら我に返っていった。


「作戦成功」
びしょぬれになりながらジェームズが呟く。
同じ頃、同じようにシリウスは呟き、はしゃぐピーターに後はよろしくと告げ、身を翻して箒にまたがった。

保健室で眠るルーピンの傍に、一瞬でも早く付いていてやりたかった。


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