◎ 午後茶会 ◎
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No.6

前々日までに断りの手紙が来なかったということは参加の意思表示がされたということだ。

スネイプは複雑な思いだった。
自室の文机の前でため息を付けば、今日の護衛当番が何事かと様子を伺ってくる。

うれしいような、そうでないような……。

あのときの礼と詫びをするため茶会を開くことにしたが、出来れば来て欲しくないものが二名いた……。

図書室でポッターに手をつかまれたとき常ならばすぐ振り払うところを、堪えた。
なにしろこちらには、不可抗力とはいえ借りがある。
その借りを返し終わるまでは、どんなことにも耐えねばならない。
招待状を差し出したとき、あからさまにいやな顔をしたブラックの顔に手袋を投げてやろうかと思った。
お前なんか本当は呼びたくなどないとつい、言いそうになった。だが、堪えた。
なにしろ、奴にはポッターに与えるはずのダメージを代わりに与えてしまった負い目がある。

せめて、おいしいお茶とお菓子くらい振舞うのがスジと言うものだろう。

ジェームズ・ポッターとシリウス・ブラック……。
気が重い。私は奴らをもてなすことが出来るのだろうか……。
いや、出来なければならない。
満足させることが出来なければこの先家を継いだときどうなる?

スネイプは机の引き出しから空色の封筒を取り出した。
封筒には魔法が掛けられ、実際の青空を映している。白い雲の群れが目の前を流れ、なんとも風雅だ。

自然と微笑が浮かんでくる。

これは、お茶会の招待状。
敬愛するルビウス・ショーからいただいたものだ。

ショー先生が『幸福の飴』で四回目の金メダルをとった。
その知らせを聞いたとき、自分は略装して祝辞を述べに言った。その時いただいたものだ。

『再来週末、ごく内輪にひっそりと茶会を催したいと思う。都合が良かったら来てくれたまえ』
そうおっしゃり先生はこれを下さった。そして、こう付け加えられた。
『私は堅苦しい作法は好かない。これはあくまで気心のしれた、親しい人を招いてのものだ。きみも普段着で来てくれたまえ』

普段着で御呼ばれなど初めてのことだ。

茶会というと大抵は、アマリー・クアントーの略式招待状を貰い、略装での出席だった。招待状形式でない普通のカードの招待状もコレがはじめてなら、開始時間が書いてあるのも、事前に簡単な食事を用意するので出来れば朝食抜きでいらして下さいと明記してあるのも初めてだ。

そういえば父が言っていた。

もてなしは、気持だと。

形式、確かに大切だね。
形式はマナーのイミだ。一定のルールに則って老いも若きも同じ皿から気持ちよく、楽しんでものを食べるための。でも、マナーを気にするあまり、食べ物の味が分からなかったり、満足いくまで飲み食いできないなら……その茶会は失敗なんじゃないかな?もてなしは気持だから、およばれした方が満足すれば主催はきっと喜んでくれるよ。よほどのヘンクツでない限りね。

元グリフィンドール寮生の父は、初めて家族参加した茶会で、スコーンをとらず、誤ってクッキーを取ってしまった自分を周囲の白い目からそう言って守ってくれた。

誰でも最初は失敗するんだよ。そんなにしょげないで、次はこんがり焼けたスコーンをとればいい。

そういって慰めてくれた。

母は傍で聞きながら、ぐっとハンカチを握り締め苦い顔をしていた……。

翌週、城では父主催で急遽茶会が開かれた。
彼が決めたルールは一つ。
『腹一杯楽しく飲み食いをすること』
自慢の庭園で茶会をやった。
丁度ラベンダーの季節で天気にも恵まれ庭園を渡る風が甘く香しかったのを覚えている。茶会の締めくくり、最後の挨拶の時にお土産にと父と二人で作ったクッキーとスコーンの詰め合わせを配った。作法と違うと、渋い顔をする人々よりも笑顔で受け取ってくれた人々が多かったのを覚えている。
実際茶会は形破りでとても楽しいものだった。

元スリザリン寮生の母、伝統と格式を重んじる純血貴族の母は父のそういう能天気で伝統を軽んじるところが許せないと祖父に愚痴っていた。

奴等は、ポッター、ブラック、ルーピン、ペティグリューは、父と同じグリフィンドール寮生だ……。

形式に則った、普通の茶会では、お気に召してもらえないかも、しれないな……。


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