◎ チアーズ ◎
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「……」
いきなり押し倒されてしまった。そして、抵抗するまもなく肉体関係を持ってしまった。
私はそれを『不快』とは思わなかった。
悔しい。ただそれだけだった。
最初から終わりまで奴のペースで進み終わった。
それが悔しい。


一言言ってやろうとブラックを探すが、奴はこちらの顔を見たとたん、逃げ出した。

なんなのだ?

まるで借金取りに会ったかのように脱兎のごとく逃げおって……。
おのれ、ブラックめ!!
むかむかと腹が立つが、ブラックはすばしっこい。
逃げるブラック、追いかける私。ホグワーツでは噂になりつつあった。
ルーピンは何もかもわかった、と言うような顔をして私を見つめ、最近はブラックと普通の日常会話ができるようになったと、報告してくる。ジェームズは好奇心一杯の目をして私を見つめ、でも何もいわない。

森の泉で休憩をしていると、ジェームズとルーピンの話し声がした。
見ると二人はブラックを囲んでなにか問い詰めているようだ。
「まるわかりだよ?シリウス」
ルーピンが綺麗な眉をひそめ、『めっ』という顔を作っている。
「スネイプと何があったのか、あえて聞くのはやめておこう。二ヶ月前に突然正装で出ていって、朝帰りしたあの日、どこに行っていた?なんてことは聞かないよ」
喉の奥で意地悪く笑うジェームズ。
シリウスはうなだれ、そして思い余ったようにいった。
「俺は取り返しの付かないことをした」
「なに?」
「どういうことか説明しろよシリウス」
「……プロポーズした」
は?
「だれに?」
「セブルスに……」
?????
「でも返事聞く前に……その」
「ヤったの?」
ルーピンのその可愛らしい口から身も蓋もない言葉が出てくる。
「……」
黙って頷くブラックは……頭を抱えてもうだめだと唸った。
「なんで?」
「セブルスは礼儀正しいんだ」
「ああ」
「うんそうだね」
「返事聞く前に……ってことはある意味タブーだろ?」
「?」
「??」
ジェームズとルーピンは顔を見合わせる。
「次の日セブルスは物凄い形相で俺目掛けて歩いてきた。きっとそのこといわれて『おまえなんか大嫌いだ』っていうつもりだ……」
「??」
「???」
「セブルスの口から大嫌いだなんとこといわれたら俺、俺……」
「……」
「……」
ルーピンとジェームズはお互い顔を見合わせそして首を傾げあう。
「シリウス……良くわかんないけど、とりあえず元気だしなよ?」
シリウスの背をさするルーピン。
「そういうことは本人に聞くのが一番だよな」
ジェームズはいいつつ、私の隠れている茂みに向かってすらりと抜いた杖を構えた。
アクシオと呟くジェームズの言葉に体が浮かんだ。私は抵抗する間もなくシリウスの前に引き立てられた。
シリウスは怯え目をあわせようとしない。おもむろにルーピンは私の手を取った。がちゃんと音がして、鉄の輪が手首に掛かった。
みるとそれは、輪の中ほどからのびた細い鎖でもう一つの輪とつながっていた。手かせの簡易版……。
「じゃ、あとはふたりで」
「じゃあね」
ジェームズがシリウスの手首にもう片方の輪をはめて去る。
いじけた男と二人手かせでつながれ森の泉に放置された…。
「ルーピン!ジェームズ!」
追いかけようとして転んだ。ブラックが重りになって私の行動を妨げる!!
「立て!ブラック!」
「……」
追いかけるぞ!
目を丸くするブラックをつれ私は二人の後を追いかける。走りながらいろいろ探すが二人の姿は見つからない。
図書館、温室、シリウスを叩いて隠れていそうな場所を吐き出させ、二人を探すが奴らはどこにもいない。
「あの……」
「なんだ」
裏庭へ続く噴水の前に来たときシリウスは言った。
「怒ってるよな?」
「……何をだ?」
「え?」
「ああ、怒っているといえば、お前が勝手に勘違いして私を避けていたことくらいか……」
何故避けられるのかわからなかった。
そしてそれが……
「悲しくて悔しかった」
「……すまん」
ブラックは頭を下げる。そして、先ほど二人にした話を繰り返した。
「なるほどな……お前の気持はわからなくはない。だが、どうしてもイヤならそのでたたき出していた」
「……」
「……お前が私を想ってくれている様に私がお前を想っているかは疑問だが……シリウス・ブラック、お前のことは決して嫌いではない」
「う……う……」
ブラックは声を詰まらせる。
「勘違いするな?嫌いではないと言っただけだ。間抜けなくらいまっすぐなお前の性格は、短所であり長所である」

そしてそれゆえに愛すべき点でもある。

「そう思う」
「セブルス……」
ブラックはとろけるような笑みを浮かべた。美しい笑みだった。
思わず見とれそうになって頭を振る。こちらに手を伸ばしてくるブラックのそれを私は払った。
「セブルス……」
「調子にのるな。まだお前を好きだと言ったわけではない!」
なみだ目になるブラックに言い放ち私は二人をジェームズとルーピンを探すぞといった。
「それなら……」
ブラックが微笑む。
杖を取り出しブラックは道の向こうにむける。
アクシオと唱えるとピーター・ペティグリューがすっ飛んできた……。
「ルーピン!出てこい。近くにいるんだろ?」
言いつつブラックはペティグリューの服の内側に手を入れた。
ペティグリューはくすぐったがって暴れる。
出てこないとピーターを裸に剥くぞと言いべろんと腹をさらす。
「やめろ!!」
すぐ近くの空間からルーピンが飛び出してくる。
ブラックの手からピーターを奪い返そうとルーピンは突っ込んでいく。
じゃあ、手かせを外せとブラックはつめよる。ルーピンは小さくしたうちして自分が出てきた空間に向かいジェームズと声を掛ける。

ぬっと、何もないところから
腕が伸びてきて丸い頭の鍵が差し出される。

手錠は無事に外された。

しかし、うかつにも手錠につながれた姿で学校中を歩いてしまったため、わたしとブラックはルーピン、ピーターに次ぐホグワーツ公認カップルになってしまった……。


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