◎ チアーズ ◎
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結局ブラックには会えなかった。

私の手元にはペティグリューとの約束だけが残った。

翌日私が図書館へ行くと、ペティグリューと、彼を囲むようにしている数人を発見した。
私に魔法薬学を教えてもらえることになったと、言ったら、皆自分も教えてもらいたいと言い出し、大人数になったという。
約束は約束だ。
人数が増えたのは仕方がないのが、男子たるもの二言はない。
初日は試験範囲の確認でおわった。
驚いたことに、ペティグリューたちは、試験範囲を全部総浚いしようとしていた。
「毎日少しずつ分からないことをつぶしておけば土壇場になって苦しまなくて済んだのに」
「でも、分からないことが一杯あって」
「そうそう」
「そこがひっかっかて、先に進めなくて」
口々にいいあうも。
しらず、私はためきをついていた。
「そうか、参考になるか分からないが、私は分からないことがあったら、そのときにその場で先生に質問をして、疑問点をつぶすようにしている。放課後などを利用することもある。自分で事典を捲れば、二十四時間好きなだけ疑問を解決できる」
「ああ」
「そうか!……」
本当に納得しているかは不明だ。
勉強の仕方はこれから各人が改めるようにすればいい。
魔法薬学。その試験範囲を駆け足でさらう。
最初は分けがわからないと言う顔の者たちが詳しく、噛み砕き説明をしていくうちに、理解が出来たという顔をする。
浮かない表情だった彼らの顔が輝くのがとても楽しかった。
何回か勉強会を開く。
主に図書室だったが、時には森のベンチだったり旧校舎の空き教室だったりした。
たまに、ルーピンの姿を見かける。
ルーピンは物陰に隠れ、ペティグリューを切ない顔で見つめている。
「あ、シリウス」
とペティグリューが呟くから振り向くと、物陰からこちらを見ているブラックと目があった。
ブラックは無言でいなくなる。
ルーピンのようにブラックも切ない表情で私を見つめる……などということがあるのだろうか?


『教える』ということは、同じことを繰り返したり言ったり、工夫して説明を繰り返しても要領を得なくてげんなりすることもあるが、とても楽しい。
そんなこともあり、わたしはつい、分からないことがあれば最後まで付き合うと言ってしまった。
ペティグリューに特別個人レッスンをすることになってしまった。
「ペティグリュー。余計なお節介かもしれないが、三科目で一位を取りたいのなら、捨てる科目を選べ」
「え?捨てるって?」
どういうこと?目を丸くするペティグリューに私は説明をする。
「言葉の通りだ。試験までの残り時間を計算してみろ?全部を満遍なくやっていては全てが中途半端になる。一位を取りたい三教科を選んで、さらに試験に出そうなところだけを集中的に勉強するんだ」
「そんな、どこが出るかなんてわかんないよ」
「授業中のことをよく思い返してみろ?先生が繰り返ししつこく言ったところがあったと思うが?……魔法薬学なら大体のヤマがわかる」
それはノートを作ってやる。
ペティグリューが選んだ二教科は、私が選択していない授業だった。幸い、魔法薬学の私の放課後勉強会のメンバーの中に奴が選んだ教科をとっている者がいたのでそいつに頼んでノートを貸して貰い、全てを課ごとになるべく短くまとめるようにアドバイスをした。
全ての課の要点を復習すれば何とかなるだろう。
ペティグリューは一生懸命だ。
私も一生懸命になっていた。
つい、口調がきつくなっても、言葉が過ぎても、ペティグリューは喰らいついてくる。
自分でも言いすぎだと思うことがあり、ペティグリューにあやまる。半分べそをかきながらペティグリューはそんなことないよという。
毎日毎日夜遅くまでペティグリューに付き合う。奴は睡眠時間も三時間程度でがんばっている。
つらくないか?
思わず訊ねた私に、ペティグリューはいう。

この先にルーピンが待ってくれていると思えば、ちっとも辛くないと。

一生懸命ルーピンを追いかけるペティグリュー。

そういえば私は、ペティグリューのようにブラックを一生懸命追いかけたことがあったろうか?
ルーピンのことで思う存分ブラックと話し合わなかっただけではない。その後を追いかけて自分の気持ちを分からせることをしなかった……。奴が私を追いかけてくるのが当たり前のように思っていた……。

そういえば私は、何をすればブラックが喜んでくれるか……わからない……。

「……どうしたの?スネイプ?」
「……ああ、なんでもない……さあ、次の範囲をやろう……」

明後日から試験が始まる。
時間がない……試験範囲はまだもう少しある。


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