◎ チアーズ ◎
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数日後、学園内は騒然とした。
告白をしたシリウス・ブラックを、リーマス・J・ルーピンはきっぱり振った。
「ボク、他に好きな人がいるから」
小さくて華奢なルーピンは、思い切り首を上に向け、ブラックに訴えたそうだ。
「だれだ……」
「ピーター」
「……え」
「まだ告白してないけど、ボク、ピーターが好きなんだ」
「……」
「ピーターのほっとけないところ。面倒くさいところとか、どんくさいところとか、時々すごく強かなところがすごく好き。今までいえなかったんだけどシリウス、ボクね、お節介焼いたり、面倒見るの、大好きなんだ」
シリウスはボクの世話を焼いてくれるけど、ボクに世話を焼かせてはくれないよね?
「ボク、君と同じで思う存分人をかまいたいヒトなんだ……」
「……」
シリウス・ブラックは何も言わず話を聞いていたそうだ。
ルーピンがやんわり、もし、これからも自分と友達で居てくれるつもりがあるなら、ペティグリューに意地悪をしないでくれといったことや、すぐ近くにもっとシリウスにふさわしい、思う存分構わせてくれる人が居るはずだというセリフにも、ただ、ただ、無言だったそうだ。

ルーピンはブラックと別れ、そのまま温室へむかったそうだ。
温室ではピーター・ペティグリューが待っていて、ルーピンの告白を、目を丸くして聞いていたそうだ。
ルーピンが切々と胸の内を語り、ペティグリューはただ頷きながら話を聞いていた。
そして何時間後ルーピンに抱きしめられたペティグリューがその唇を受け入れた、というのは今のところ噂でしかない。

それに引っ張られるように、ポッターを呼び出した。
振られることは、分かりきっていた。
だから森の泉に近いところに呼び出して、単刀直入に言った。
ジェームズ・ポッターは目を丸くすることなくただ、黙って聞いていた。
沈黙が支配する空間。
聞こえるものは鳥のさえずりと木の葉ずれだけ。
やがてポッターは首をかしげながら、ほんとうかと訊ねてきた。
私が頷くと、奴はじっとこちらの目を見た。覗き込みゆっくり顔を近づけてくる。
私は反射的に体を引いた。ポッターは微笑を浮かべながら言った。
「スネイプ、俺のこと好きは好きでも俺に触りたいとか、キスしたいとかHしたいとか思わないだろ?君の好きは、こういう風な場所で言っちゃいけない好きなんだ」
もし君のことをそういう意味で好きな人に、好きといえば、最終的に自分も相手も傷つく。
人によってはいきなり押し倒して、そのまま裸に剥かれて強姦されて……。その後は聞くに堪えなかった。耳をふさいだ私に奴は苦笑いをする。
「そういう言葉は、よく考えて使わなくちゃね……」
片目を瞑りポッター。
「とりあえず、俺、彼女いるから。ごめん。でも友達になりたいっていうイミの好きなら、まあ今度遊びに行くとき声かけるから気が向いたらきてくれよ……」

握手して、分かれた。
ポッターは同性愛に偏見はないようだ。
もっともブラックと大親友をやっているくらいだから、そうでなければつとまるまいか……。

ああ、これでやっと前に進める。
やっと自分の気持に決着がつけられたと安堵し、すがすがしさを感じると同時に、少し悲しさも感じた。存在を否定されたわけでも、バカにされたわけでもないのに……。

足は無意識にルーピンが教えてくれた場所に向かう。
木々が泉の周りを囲み、木漏れ日が優しく日色を変える。緑の天蓋とカーテンのような光に包まれたそこで、私は思わず泣いていた。

勘違いといえ、恋は恋、振られて、悲しい……。
小鳥のさえずりと少し冷たい風に優しく包まれ思う存分私は泣いた。


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