◎ チアーズ ◎
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試験中、私はずっとブラックとペティグリューのことを考えていた。
ブラックに、何をしてやれば喜んでもらえるか。
そもそも私はブラックのことをどう思っているのか。

魔法薬学の試験で、赤コグラと紅コグラがでた。
やはりな……。
思ったがペティグリューは大丈夫だろうか……。
この二つの違いを最後まで間違えていたペティグリュー。
心配しても仕方がない。奴の努力が実ることを祈りつつ私もベストを尽くす。

試験は始まり、そして終わった。


結論から言えば、ペティグリューは願いをかなえた。
数占い、杖科学、そして、魔法薬学で一番の成績を取った。
「……や、やった……やったー」
成績発表の日、ペティグリューは飛び上がり、そして、そのまま腰を抜かした。

おめでとう!
おめでとう!

仲間たちは口々に賞賛した。
この半年あまりで奴は格段に成長した。

腰を抜かしたペティグリューを抱え上げ皆は温室へ運んでいった。
温室ではルーピンが待っていて、担ぎ込まれたペティグリューにどうしたのと目を丸くして訊ねる。
ペティグリューはルーピンを前にするとしっかりと自分の足で立ち上がり、歩み寄りそして、さらにしっかりその手を握った。
「僕、三教科で一番とったよ」
大勢の友達に助けてもらって、がんばった。
「三教科で一番取ったら言おうと思ってたことがあるんだ……」
最後まできいてね。
ルーピンはたまにだけど、人のいうこと最後まで聞かないで思い込んじゃうところあるから。
ルーピンはうんとうなずき、ペティグリューの言葉を、よどみなく顛末を語るペティグリューの言葉を最後まで聞いていたそうだ。
「僕ルーピンに守られてばっかりじゃなくて今度はルーピンを助けることもできると思うから……。してもらうばっかりじゃなくて、してあげることも出来ると思うから……僕と、もう一度付き合ってください」
「……はい」
ルーピンはほほを染めてうなずき、顎をあげて目を閉じたそうだ。

ちゅう して 

ペティグリューはそのサインに、顔を真っ赤にして、でも男らしく応えていたという噂だ。
実際見たわけではない。
私が見たのは、ルーピンの手を引き、どうどうと胸を張って廊下を歩く姿だ。

私は、魔法薬学で始めて三番の成績だった。
一位はペティグリューとブラック。同点一位だ。
ポッターは四位でルーピンは十二位。

「今回調子悪かったんだな」
成績表を見上げる私の背後から懐かしい声がした。
「お前は違うようだな」
ブラックだった。
幾分やつれたブラックが、微笑を浮かべ立っていた。
ちょっとつきあってくれといわれ、誘われるままにあの森の泉へゆく。
歩きながら私はペティグリューのことをブラックに話す。
「ああ、実はそれ知ってたんだ」
ある日、ブラックとポッターはルーピンから相談を受けたという。
ペティグリューに構いすぎる自分を止められないと。
長い目で見たとき、それはペティグリューのためにならないと分かっている。
でも、ついつい手を出してしまう。
ペティグリューの方もそんな自分がよくないと、分かっているようだったが、どうしてもルーピンの手を振り解けない。
ペティグリューは流されやすい所がある。
こういうところは変えた方がいいと、言葉に出してアドバイスすることは簡単だが、それでは効果がない。
奴自身が自らの意志で今の自分を変えたいと強く望まなければ、変わることなど出来ない。
馬を水辺につれてゆくことは出来ても、水を飲ませることは出来ない。
それと一緒だ。これは、本人の気迫が何より必要な問題。

そこでブラックはポッターと一計を案じた。

ペティグリュー自らが、自分を変えたいと言いだすように、それとなく仕向けたという。

好きな人一人守れない男など情けない。
でも、情けないのは直すことが出来る。

ペティグリューがその気になったとき、試練を与えた。
ランクに応じて少しずつ厳しくしていった。
思わず手を差し伸べるルーピンを断ることができたところで、最後の仕上げとして、三教科で一番をとることを提案した。普段百番前後の成績を取っているペティグリューにとっては奇跡に近いことだ。
特にルーピンが最も苦手とする魔法薬学で一番が取れれば、何よりの自信になるだろう。
「どうして言ってくれなかったんだ?」
そうすればもっと、惜しみない協力をした。
三教科といわず五教科で一番を取れるようにプログラムを組むことも出来たのに……。
「ん……なんていうか……」
ブラックは頭をかきながら、セブルスはルーピンと一緒で構い症だから、なんだかんだ言いながら全部お膳立てしてやりそうだったからと言った。
「それじゃ意味がないんだ。最初から最後まで奴が全部自分でやらないと。ピーターが自分の意志で誰かに助けを求めるのはいいけど」
いいたいことは分かった。
私やルーピンは余計な手出しをしてしまう。
多分、最初から聞いていたら私は、何くれとペティグリューの様子を気にして、やはり手助けしてしまったかもしれない。ブラックはそれを心配したんだろう。
「それに俺、この件を利用して確認したいこともあったから……」
その言葉を言われたのはちょうと森の泉に立ったとき、だった。
「俺、今回魔法薬学で一番をとったらお前に言おうと思ったことがある」
その一言を言うために、頭が割れるかと思うくらい勉強した。
「こんなにがんばったのは今までなかったな……」
くすり、笑いながらブラックは深呼吸をした後言い放った。

「別れよう」


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