◎ チアーズ ◎
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それから奴は変わった。
自分でキチンと身支度をするようになった。
そのせいで女の子にちやほやされるようになったが、奴はリリー一筋だった。

そして、私は、日に日にきちんとしてゆくポッターを目にするにつけ、胸が高鳴るようになった。
それほど、身なりの整った奴は、すばらしい紳士だった。

勘違いと、分かっていた。
同性を好きになること。
きちんとした奴の姿はとても好みだが、性格は私とは全然合わない。
だが、人というものは頭で分かっていても心は納得しない。
勘違いでも惚れてしまったと思い込んでいる以上、私は自分に決着をつけねばならない。

相談をする相手を選んだ。

同寮のスリザリン生に言えば、どうなるかは目に見えていた。
幸いなことに私のお節介な性格ゆえに、ポッターにかまっても寮生は「またスネイプのキレイ好きがはじまった」と苦笑するだけで今まではこと事なきを得ていた。

話の分かる奴が望ましかった。
そこでグリフィンドールのリーマス・J・ルーピンに話した。

実は、ルーピンも片思いの真っ最中だった。
誰とはいえないけどと前置きし、彼は意中の人とは別の人に猛アタックされていてどう処置をしたらいいか困っていると語った。
ルーピンは三角関係だった。
ルーピンは誰かに恋され、その誰かとは別の誰かに恋をしている。
状況から考えて、ルーピンに猛アタックをしているのはシリウス・ブラックと思われた。
奴のルーピン贔屓は、それはもうホグワーツで知らぬものがないほど激しかった。
片時もルーピンの傍を離れない。その様子はさながら、命を与える金のりんごの果樹を守るドラゴンといったところだ。
その有様はブラックの嫉妬深さを物語っていた。
シリウス・ブラックは、とても美男子だ。女好きのする華やかな顔立ちに、名門の出らしい優雅な物腰。
身なりも、二三部は隙があるが、まあ、合格点を与えてやっていいだろう。
そんな奴を女生徒がほうっておくはずがない。
群がる女生徒選り取り緑だが、ブラックは同性にしか興味を示さない星の元に生まれた。
七代前からつづく呪いで、ブラック家は時々そういう嗜好のものを輩出する。
これが、実に異性が興味を持たれずには居られない容姿で生まれてくるから不幸なことだ。
それはさておき、ルーピンと私は愚痴りあった。
「自分の事って結構みえないんだよね」
「そうだな。冷静な判断が下せないものだな」
話をしながら、時々お互い沈黙をし、お互いが対策を提示しあった。
そして、やはり私はポッターに告白を、ルーピンも片思いの相手に告白をし、同時にブラックは完膚なきまでに振ってやるしかない、という結論に達した。
私は自分の心に、ルーピンはシリウス・ブラックに現実を教えてやること。それが一番だ。
「泣きたくなったらいつでも胸を貸すからね」
禁じられた森を右手に見て進む森の中、泉がひとつある。
「ボクらのお気に入りの場所なんだけど、セブルスにも教えてあげる」
話を始めたときはスネイプだった呼び名がいつの間にかセブルスに変わっていた。
だが、不愉快でないからよしとしよう。
「お前が泣きたいときにも私が胸を貸してやろう」
「あ、それは大丈夫」
ルーピンは両手のひらをあわせながら言い放った
「彼は結構押しに弱い人だから、おしておしておしておして押し捲るよ」
にっこり微笑むルーピン。
めがねで隠れているが、彼は美少女と見まごう美貌の持ち主。
身長ではこちらの頭半分強低く、体重ではブラッジャ二個分ほど軽い。
とび色の髪は長く、三つに編んでも腰まで届く。そんな華奢で小さな彼、可憐を描いたようなルーピンを私はとても強いと思った。



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