◎ pigeon ◎
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「……」
首の付け根に口付け、太い血管をなぞるようにして這うルーピンの舌にシリウスは微かに身じろぎする。
「……リーマス」
「……」
声を掛けるがルーピンは反応がない。ただシリウスの首筋に顔を埋め貪るように舌を、唇を這わせている。

ちゅっと吸いつかれ離される。

ぞくり、シリウスの背中に震えが走る。
それはじわじわと体全体に広がり彼の呼吸を乱す。

「リーマス……」
「……」
呼びかけにルーピンはうっすら色づいた瞳を向ける。
金色の濃い茶色の瞳。
どこかボンヤリしていて心ここにあらずといった……。
「正気じゃないな?リーマス」
「……」
ルーピンは答えずシリウスの襟元を広げさらに頬を寄せてくる。
「……う……」
リーマスはやる気一杯。すぐ傍にベッドがある上、今日はピーターもジェームズもいない。二人っきり……。
シチュエーション的にはとてもおいしい。

ただひとつ、彼が正気じゃないと言うことを除いては。

「……」
鎖骨の下を甘噛みされリーマスを押し倒しそうになった。

気持ち的にはこのままなだれ込みたい。
でも、リーマスが我に返ったとき、一つのベッドにいる自分達に気がついたら、どんなに打ちのめされるだろう。
満月二週間前、リーマスは体調が悪くなる。
俗に言う満月病の症状がでてろくに食事も取れなくなる。
満月一週間前は普通に動けるようになるが、気分が妙に高揚して自分自身が抑え難いという。

最初に言われた。

『僕が噛み付きそうになったら思いっきり殴ってね』
そんな時の僕は『噛みたい』『引き裂きたい』『貪り食いたい』それしか頭にない。
危険な状態だから、お願い正気に戻して。

人としての理性を失うことをリーマスがどれほど怯え愁いているか知っているだけにこの機に乗じることはシリウスにはできなかった。

椅子から降りて自分を絨毯の上に倒そうとするリーマスの肩を掴んで大きく揺さぶる。
「―」
がくんと大きく頭が揺れて瞬時にルーピンの瞳に理性が戻る。シリウスはもう一度彼の顎を掴んですばやく唇に触れると、さっと立ち上がった。
「続きはそのうちなっ」
さりげなく喉元を隠しながらシリウスは自分のベッドへ戻る。
今日はこのあとクィディッチの練習がある。
クローゼットからユニホームを出し着替える。
ルーピンには見えないように自分の首筋に目くらましの魔法を掛ける。つけられただろう跡を隠した。
「シリウス……僕、何かした?」
茶色の瞳を見開き、ルーピンは微かに怯えのこもる声で訊ねた。
「俺のキスでうっとりしてた―」
「それだけ……?」
探るような声音に、シリウスは振り返りまっすぐルーピンを見つめ、うっすら、意味ありげに唇を引き上げた。
「な、なに?」
「すごく気持ち良さそうだった……」
「―そ、そういうことじゃなくて!」
「ふふふふ」
うっと息をのみ顔をあかくするルーピンにシリウスはもう一度意味ありげに笑いかわいかったと呟く。
「……」
一瞬言いよどんだルーピンに、シリウスはこのあとの予定がないなら練習を見にこないかと誘った。



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