◎ pigeon ◎
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ジェームズは、スネイプを無事部屋まで送り届けたらすぐ帰るつもりだった。 誰にも見つからず、スネイプを寮の前まで送り届けた。 スネイプは真っ直ぐ自分の顔を見ながら礼を述べた。 上気した頬、僅かに焦点の合わない目、ふらつく体。 すぐそことはいえ、一人で行かせるのは心配だった。 スネイプは大丈夫だと頑強に言い張ったが、一人で立っている彼の肩を軽く押したら尻餅をついた。 床に座り込んだまま動かない。 震えながらぎゅっと手をにぎり痛みを堪えているようだった。 一人にしておけない。 ひどい目にあった、その恐怖が抜けていないんだと思った。 でも、友達を、同じスリザリン寮生を呼ぶのは絶対嫌だと駄々をこねた。 「……じゃあ、しょうがない」 スネイプを抱えジェームズは再び歩きだす。抵抗されるかと思ったが、スネイプは拍子抜けするくらい大人しかった。 今夜は自分の部屋に連れて行こう。 幸いひとつベッドが空いてる。荷物に埋もれているがちょっと片せば使えるだろう。同室のシリウスは保健室へ直行だ。ルーピンは分からないけれど、ピーターは帰ってくるだろうからそうしたら彼には説明して……。 考えながら歩いていると、あっという間に寮に着いた。 眠るレディを起こしジェームズは静かに寮内に入っていった。 就寝時間のとうに過ぎた、誰もいない談話室を抜け寝室に続く梯子を、スネイプを先に上らせる。 彼は動くのが辛そうだった。 一歩上がっては大きく息を吐きながら時折ずり落ちそうになりながら上った。 なんだかおかしいと、ジェームズも気がついた。 上がりきったところでスネイプは動けなくなった。 床に転がってあえぐように息をしている。 ジェームズはそっとスネイプの肩に触れ揺らす。 びくんとスネイプは体をのけぞらせ、くるんと丸まった。 ……もしかして…… 「なにか……飲まされたんですね……?」 「……」 スネイプはいやいやをするように首を振った。 でも、真っ赤な顔、激しく乱れる呼吸。目許に涙を浮かべて訴えるようにこちらを見上げる彼はどう見ても一服盛られたようにしか見えない。 媚薬だ。なんだかたちの悪そうな……。 一般的な媚薬では、ここまで切羽詰った様子にはならない。理性の抑制が効かないとか、喉が渇くとかそういったのなら知っているが……これは……。 ジェームズは唾を飲み込んだ。 動くだけで辛そうだ。 もうすぐ絶頂を迎える人のように彼は全身を細かく痙攣させている。 「……ぁっう……」 手首を掴んだら、吐息とともに悲鳴が吐き出された。 「触られるだけでもだめですか」 「……」 歯を食いしばりスネイプは大きく一つ瞬きして答えた。 苦しそうに悩ましげな息を吐くスネイプ……。 「さ、さわらないで……く……れ」 絶え絶えに懇願される。 スネイプのそんな姿にジェームズの背筋をなんともいえない心地よさが降りていった。 なるべくそっとスネイプを引き寄せる。 ただ、触っているだけ、でも、薬で感覚を狂わされている彼は背中をしならせ身もだえした。 胸がどきどきした。背筋を降りていった心地よさが熱になって体をめぐっている。 やめてと言われたが、抱き寄せると、彼の体のあまりの熱さに驚いた。殴られるかと思ったが、力がはいらないらしく、スネイプの両手はだらんと下がったまま。 頭を押さえ、ぎゅっと抱きしめてみる。腹の辺りに当たる彼自身の固さが、余裕のなさを物語っている。 「かわいそうに。薬のせいでこんなに苦しんで……」 「……」 しゃくりあげるように浅く速い呼吸をするスネイプはこちらの言葉に不思議そうな顔をした。 「……あなたが……よかったら……」 あなたがよかったら、この熱をおさめるのに協力しますよ……。 気がつくとジェームズは耳元でささやいていた。 スネイプにあおられ、喉が渇いていた。胸はどきどき、頭はくらくら、下腹部は熱をおびてしまっている。 「いやだ……」 「……」 即答された。 その声でジェームズは思い出す。 自分は彼に手ひどく嫌われているということ。 彼は自分がジェームズ・ポッターだと分からないからこうして大人しくしているのであろうこと……。 「いやだ……そんなの……」 きつく瞑った目から涙が一つ落ちる。 「こ、婚約もしてない相手に、そんなことさせられない」 「?」 思っても見なかった言葉にジェームズは正気に返った。 「婚約……ですか……?」 「……」 スネイプははらはら泣きながらもう一度、同じことを繰り返した。 この人にとってはエッチをするのは、たとえ真似事であってもきちんとした形がないとだめなのか? 「触るのが僕の手じゃなくて、自分の手だと思えばいいんです」 言いつつジェームズは抱いているスネイプ背中をそっとなでおろした。 彼がかすれた声で悲鳴を上げる。 一回もしくは数回熱を吐き出せば、彼は今の状態から抜け出せる。なのにスネイプはできないを繰り返す。 恥ずかしい……そういうことなんだろうか? 薬のせいだから正気じゃなかったという言い訳を彼は自分に許さないらしい。 彼らしいといえばそうなんだけど……。 ジェームズはくらい笑いがこみあげてきた。 ここで押し倒したらスネイプはどうするだろうか? 薬でへろへろ、体に力は入らない、そんな状態で抵抗なんかできないだろう。きっと、こちらのなすがまま、翻弄されるがままだろう。 快楽に染まる彼の顔を見たいとジェームズは思った。 抱しめたままスネイプを持ち上げ、自分のベッドへ運んだ。 毛布の上でスネイプは再び、ネコのように体を丸くして、呼吸を荒くする。 「スネイプ……」 呼びかける。 びくりと震え、首をふるスネイプ、肩を強張らせ彼は怯えた目で自分を見やる。 そんな表情をさせたいんじゃない……。 怒ったり、睨まれたりも悲しいが、そんな怯えたカオをされるのは切なかった。 「そんなに怯えないで……熱を吐き出したほうが楽になるけど、あなたがそんなに嫌なら、しませんよ」 無理やりなんて、そんなこと、スネイプをさらった奴らと同じだ……。 体はお互いどうしようもなく反応している。でも、スネイプが嫌だと言っているんだからそれを尊重しよう。 「でも、一晩辛いですよ?それでもいいんですね?」 「……」 言葉なく頷くスネイプ。 ジェームズは部屋の隅に置かれた水差しをとり、サイドボードにおいた。サイドボードの引き出しからマグカップを取り出し、水を注いで杖を振った。 カップの中で水が沸き周囲に甘い香りが漂った。 「……まあ、お茶でもどうぞ……て、言っても飲める状態じゃありませんでしたね……」 ジェームズは独り言の様に呟き、傍らにカップを置いた。 「無理かもしれませんがこうなったら眠るに限ります。とことん付き合いますから、あなたは眠る努力をしてください」 「……」 スネイプはまた頷いた。そして目を細め笑った。 それはまるでありがとうと言われている感じだった。 「……」 決心が鈍りそうな笑顔。 ジェームズはスネイプから視線をそらせカップに口をつける。『気が変わったらいつでも言ってください協力しますから』と言う言葉ごとのみ干す。 なんで、こんなにかわいいんだろう。 目を閉じ小さく息を吐き出すスネイプを眺めながらジェームズは初めて彼へのいとおしさを自覚していた。 (了) |
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