サランディプティー 
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※※※※※※
((注)話の都合上、15禁表現がはいります。)

「どうした?」
「え?」
「何か変だぞ?」
友の言葉にロイはあいまいに微笑んだ。
この友に隠し事は出来ない。正直に全てを話すべきなんだろう。
「押し倒された」
「は?……誰に……って聞くまでもないか」
「……」
ため息を付きつつロイは。テーブルの上の白ワインをグラスに注いだ。
「びっくしりた」
「ああ」
「まさかそこまで思いつめていたとは……」
ハボックに自分を押し倒す度胸があったとは……。
そして、そこまで追い詰めていたとは……。
純粋でまっすぐで、非常に好感を覚える気質……。
彼の率直さや口さがなさは大好きだが、まさか体を求められるとは……。
好きだからキスしたいと思うのは、それは同然のことだ。
だが、私のような出世第一の人間にハボックのように純粋な人間はやはは合わないだろう。
彼は、自分を買いかぶっている。
そして、高評価からくる憧れを『恋』と思い込んでいる……。自分にはそう見えて仕方がない。
頭をかきながらふうとロイはため息を付く。
「困ってる……か?」
「少し」
探るようなまなざしを向けてくる友にロイは安心させるよう微笑みかけた。
「だが何とか説得に応じてくれそうだ……」
「悪かったなロイ」
「え?」
「気付かなくて悪かった……」
「お前が謝ることじゃない。私がうかつだったんだ」
油断しましたね、大佐、ロイ
「まったく油断した」
そしてこれがいい教訓になった。
かけがえのない優秀な部下を失わないために、もう少し距離をとる必要があることがわかった。
ぼんやり考えていたら、ヒューズが手からグラスをとった。
傍らに膝をつき、ヒューズはそっとメガネを外した。
みどり色の瞳。
榛というのかぺリドットというのか……そんな不思議な色をした目。
そっと両頬をつつまれる。
前触れなく、唇が額に落ち、鼻先を掠めて唇に降りた。
目を閉じ口付けてくるヒューズの顔をロイは珍しいものを見るように見つめた。
久しぶりだ。こんな距離で彼の顔を眺めるのは……。
昔はこうしてよくキスを貰った。
もっとも、人に触られるのが大の苦手だった自分に協力してしてくれたリハビリだったが……。
どちらかに恋人ができるまでの約束だった。
そういう約束で、毎日のように口付けを交わし、同じベッドで眠った。真似事はあったが、一度もセックスしたことはなかったな……。
今、自分は酷い顔をしているんだろうか……?
不安で不安で仕方ないような顔をしてるんだろうか?
こちらの不安をヒューズは敏感に感じ取って和らげてくれる。
甘噛みするよう、唇をうごめかされ、気が遠くなるような痺れが腕の内側に起きる。
「……ん……」
頭を抱えるようにしてヒュ−ズはなおもキスを続ける。
唇をぴったりとくっつけて、ハボックがしたように口内の粘膜をくっけあって……。
引き剥がそうとしたが、ヒューズはびくともしない。
向こう脛を蹴飛ばしたときも、眉を少し動かしただけで、ぐっとこちらを抱きしめると。奴は体重を掛けて押し倒しに掛かってきた。
「どうした……ヒューズ……」
「……」
一旦離された口をまた塞がれ、膝の間に手を差し込まれ、ぐいと開かされた……。体を割り込ませ、ぐっとくっつけられたそこは、硬く膨らんでいた
何が起きているのか、理解はできたが認めたくはなかった。
まさか……。
そんな気持ちだった。
まさか、そんな。
彼が自分を押し倒しているということが信じられなかった。
「やめろ……ヒューズ……」
「……」
「グレイシアとエリシアに言うぞ……」
「カミさんは許してくれるさ」
「!?」
「俺がお前をどんなふうに思ってるか、グレイシアもちゃんとわかって納得してくれてる……」
「納得?」
「奥さん公認だ……」
「―――」
ヒューズはロイのローブを左右に引く。
あらわになった肩を押さえつけ、彼は首筋にも口付けを落としてくる。
何が、起きてる……。
奥さん公認?
「そんな馬鹿なことがあるが!」
「……ほんとだって」
振り回した腕を封じられた。
上から下に、丹念に、そして皮膚をつまむようにして、降りてくる彼の唇。
「ロイさんだったらいいわて、奥さんも言ってくれた」
「あ……」
体中のあちこちがびりびりと反応する。
ぞく、ぞく、と定期的に起きる痺れに身悶える。
くすぐったくて、ぞくぞくして身をよじってもその感覚は強くなるばかり。
「妻子と同じくらいお前を愛してるっていう俺の気持ちを彼女は理解してくれたよ……」
「……」
もういちど口付けられた。
今度は舌を絡ませるディープキス……。

いつの間にかお互い裸でいた。
女性にするように、丹念に、体の隅々まで弄られる。
乳首をすわれ、息が漏れた。へそに舌を突き入れられ体がはねた。
うつぶせにされ、背骨の間をつうと降りてゆくヒューズの舌の生暖かい感触に、たまらず、声を漏らした。
シーツを両手で掴み、唇を噛んで声を殺した。

昔、幾度か行われた、リハビリを思い出し、ロイはぎゅっと身を硬くした。
あの時は、本当にリハビリで、眺める、触るがおもだった。
今のようになのは……今回が初めてだ……。
手が、ヒューズの手が自分を掴む。
他人の手が自分の性器に触れるのは、相手が例えヒューズとしても少し恐怖を思える。
うごめく……まさしくそういう表現がふさわしい。絶妙の力加減で、突起をなぶる。先端から根元へ向かって施される愛撫に、意識が朦朧としてくる。
何も考えられなくなる。
ただ、ひたすらに、その快楽を追いたくなる。
もと優しく、そして強く……なんてことを口走りそうになってロイはしっかり口を閉じた。
「……」
「う!」
背中に冷気が当たる。
首を回してみると、ヒューズが氷の塊を握り、雫を背中に落としているところだった。
「暑いだろ?」
だからと、氷を一つ口に含み、がり……と噛んだ。
顎を掴んで口を開かせ、強引に口付けてくる。
破片の混じる冷水を口内に流し込まれる。
飲み込みきれなかった水が首を伝って胸に落ちる……。
「ヒュー……ズ……」
体をうねらせるが、水滴からは逃れられない。
もう一つ手に取り、彼はすうっとこちらの背中に滑らせてきた。腰の辺りでそれを止め、ぐりぐりとまわす。
「は……」
「ここは神経が集まってるところだそうだ……どうだ?」
気持ち良いか?
「馬鹿なこと……」
皆までいえなかった。
ぐいぐいと、前をしごかれる。
背中の氷が体温で融けたらたらと水分をしたたらせる。
「!」
氷を持った手に前をつつまれ声にならない悲鳴を上げた。
あつく、冷たい。
血圧が一気に上昇して低下したように呼吸が乱れる。
「……、……、……」
叫び出してしまいたかった。でも、ぎりぎりのところで保たされる理性がそれを許さなかった。
耳をかじられ、乳首の先端を弄られ、思いつく限りの性感帯を刺激され、息だけが荒くなる。体の内側に熱の塊が溜まっていく。

いきそうでいかない、巧みなやわらかさの愛撫……。

「もう、イヤだ……もう……」
こんなじらされるのは耐えられない。
「決着を付けてくれ……」
「それは俺に、して欲しいってことか?」
くいと指先に力を込められ、ロイは頷いてた。
「……よかった」
俺も限界なんだとヒューズ。

「……」

はめられた……とロイは思った。


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