◎ roikoi ◎
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秘密会議で事情を聞かれ、奴らの処分は穏便にと耳打ちした。 ロイは、説明するまでもなく意図を理解してくれた。 若気の至りで過ちを犯した将校が出世したときには……いいつてだ。 途中で戦争をはさんでそいつがいなくなったとしても、現権力者の親に貸し。貸しは利息をつけてのちのち返してもらおう。 平穏に時を過ごす。 ロイは気を使ってあれやこれや言う前に自分から飯を食い、風呂に入り、寝る。 俺たちは普通のルームメイトになった。 ロイは急にしっかりし出した。 でも、まだどこか頼りなげで放っておけない儚さは健在で、おれは奴の寝顔を見ながらたまらない気持になる。 守りたい。 コイツを守って、支えて、コイツが幸せそうに微笑む日常、その日々に俺もいたい。 コイツがてっぺんを目指すなら俺はコイツを押し上げてやろう。 ロイと一緒にいたい。 「そんな目で見ないでくれ」 ある夜たまりかねたようにロイが言い放った。 「?」 「そんな、射殺すような目で俺を見るな」 一体お前は何がしたいのか、ロイは俺に詰め寄る。 言われている意味がわからなかった。 射殺すような目? 俺が? 「お前には感謝している……人に触られても気持が悪くなくなったのも、健康管理が自分でできるようになったのも、みんなお前のお陰だと思っている……でも、そんな目で俺を見ても、俺は何もしてやれない……」 「……」 話の途中だったが、席を立って洗面所の鏡を見に行った。 射殺すような目、本当だった。 そして俺は唐突にやつに欲情している自分に気付いた。 「……」 戻るとロイは俺を一目見て、一瞬怯えた顔をした。 近づくと、視線をさまよわせ逃げ道を探す。 「そんな怯えた顔しないでくれ」 そんな顔をされたら余計に、追い詰めたくなる。 「怯える?」 ロイは笑う。そう、目に怯えを残して平静を装う。 近づいて、まっすぐ目を見ていった。 「一つ疑問に思ってたことがあるんだ」 疑問。俺はそれを奴に聞いてみた。 「お前、俺とするのイヤか?」 「なに?」 「俺とエッチするのいやか?」 「……」 くそう、俺は一体、何を回りくどいことを言ってるんだ……。 さっさと捕まえて、押し倒して、服を引っぺがして、そして、そして。 「……ボランティアの必要経費か」 呟くロイ。 「?」 「今までの貸しを返せって言うことだろう?」 「?」 ロイはあざけるような、でもどこかほっとしたような笑みを浮かべる。 ボランティアの必要経費? 「いいとも。投資したからにはそれなりの利益を……回収す……るの……は」 いいながらロイは息が詰まった顔をする。 無理をしているのは丸分かりだった。 無言で立ちあがり、ロイはバスルームへ消える。 やや間があってシャワーの音。 『ボランティア』の必要経費を払ってくれるようだ。 風呂から出てきたロイは、完全に表情をなくしていた。 「お前も早く浴びてこい……待ってるから」 「すごいな」 掛け値なしに思った。 「なに?」 「すごい自制心だ……最初を知ってるだけに、敬服するね……」 笑って、俺はロイに近づいた。ロイはびくりともせずに立っている。 眼鏡を外して、ロイにキスをする。お互い目を開いたままで。 今まで出一番、感動のないキスだった。 いままでは、触れた唇でロイの気持が手に取るように分かった……。 ロイが俺に怯える様子や、なれて体を預ける様子、今日のキスはロイが気持ちいいと思っているかそうでないか……そんなのが触った唇から伝わってきた。 こんなんじゃ、鏡に映った自分にキスするほうがまだ感動する。 自然にため息が漏れる。人形のようなロイ。人の感触も温かさもどこかへ置き忘れてしまったようなロイ。 何でコイツは、無理をしようとする? 何で、いやならいやといわない?それとも、いえないのか?言いたくないのか……? 「ロイ」 タオル一枚のロイをベッドに座らせ仰向かせる。 「俺はお前が嫌いじゃない。それは信じてくれるか?」 「……」 「俺はお前が好きになってる」 「……」 俺はお前が好きだ。 「好きだよ……ロイ……」 目を閉じて、その気持ちを込めてロイにキスをする。 「……」 ふっと、ロイが、吐息を小さく戸惑うように息を吐き出したから、もう一度唇に触れるだけのキスをした。 かすかに震えている唇は……喜んでいるように思えた。 「俺がお前の好きなところを一つ一つ上げで言ったら、きっと日が暮れちまう……そんな時間の無駄はしたくない」 「……」 ロイの肩が徐々に上がっていく。 頬が紅く染まり、恥ずかしいのか目は堅く閉じたまま……。頬や目じりにキスを落としながら俺は言葉を続ける。 「ボランティアの必要経費なんか要らない……ただ俺はお前が好きだから……」 「その先は……いい」 怯えるように俺から離れようとするロイの動きを封じて、ベッドに押し倒す。 顔をそむけるロイの耳元で俺はささやく。 「ちゃんと聞いてくれよ」 「……」 「俺はお前が好きだから、おまえとしたいんだって最後まで言わせてくれ。そして、イヤじゃなかったらうんて言ってくれ……」 「……お前のことは……嫌いじゃないむしろ」 「嫌いじゃない?むしろ?」 「…………」 消えそうな声でロイは恥ずかしいと言い放った。 「俺なんかがお前を好きだなんていうことがはずかしい?」 「おまえのような何でもできる奴が私なんかに好きだと言ってくれることがはずかしい……うれしくて恥ずかしくて……消えてしまいたくなる……自分が思っているのと同じ気持ちを返してもらえるとは予想外だった。だからどうしたらいいか、分からなかった」 あのまま最初のとき待ってもらった続きをしたいような気はするが、怖い……。 まだボランティアの必要経費を請求された、そう考えたほうが気が楽だった。 「でも、自分で言っておいてなんだが、悲しかった」 ロイは俺の下でもじもじしながら言う。 「するのは構わない。でも、何かの代価じゃいやだ……そう思っている自分にさっき気がついた」 「そうか……じゃあ……俺たち両思いなんだな……」 「……」 ロイは無言で俺の首筋に顔を埋める。 抵抗を封じるため体に下敷きにした手が抱きしめてくるように俺を掴む。 「……なあ……どうしてもダメだったら言ってくれ」 「……?」 「一回してみて、何が怖いか、あとで教えてくれ」 「普通はそこでやめようというんじゃないのか?」 「はは、待ったは一回きりだ。一度は待つが……二度目は待たない」 「……」 言葉をとめるロイにキスをして、タオルの裾から手を突っ込む。 そこには既に自己主張を始めたロイが……。 足の間に体を挟んで、押さえつけて、キスをする。 ロイは今度は目を閉じてくれる。それに気をよくして俺は舌を入れてみた。 ううんと、ロイは呻き、絡ませたこちらの舌に自分のそれをこすり付けてくる。 片手におさめたロイを少し締めると、びくりと腹を竦ませて顎を上げた。 「マー……ヒューズ……」 「ん?」 「……風呂に……入れ……」 「後でな」 「今、入ってこい」 「今、忙しいからあとで」 「……」 そう、俺はロイに触るので忙しい。 ロイにキスするので忙しい。 服を脱ぐ間すらもったいないと思っている。 俺のキスを受けるロイが、少しづつ服を脱がせてくれる。 俺が、何かをするたびに、ロイの体は跳ね上がる。俺はそれが面白くて、わざと噛み付いてみたり乳首を吸ったりする。 ロイは息を詰めながら俺がしたいちいちを俺にしかえす。 首にキスマークを作れば、同じ場所に、噛み付けば同じように、でも、そのうちまったく余裕がなくなったのか、俺が足の間に顔を埋める頃には、自分の口を押さえて息を殺していた。 口を動かすたびにロイは小さく声を漏らすようになる。 ああ、気持ちいいと、感じてくれてるんだ。 喉の奥まで飲み込んで、ロイに触る。両足が俺の頭を締め付け、指が髪を掴む。 離れろと押し殺したその声色に限界が近いことを知った。 育っていく口の中のロイを締めつけるように吸った。 「……は」 細く、高いかすかな声とともにロイは吐息を吐き出す。口内に広がる味は快楽の証なんだろう。 ロイは視線をそらせて足を閉じようとする。 荒い息づかい。キズだらけの腹が大きくえぐれるように引っ込みそして戻る。 のそりとロイが動き、俺にのしかかってくる。同じように……。 そういうことらしい。 「無理するな……なれないときついぜ?」 「……」 変わりにキスをしてくれというと、ロイはさらに頬を紅くして、すうっと目を細めた。 キスをしてくれる。唇に、顔に、額に、そんなロイを抱きしめながら俺は、ヤツを触る。 くすぐったいのか、触るたび体をくねらせるロイが面白くて、可愛くて、俺は全身探るようにロイに触った。 歯を立ててようやく、反応のある場所、息を吹きかけただけで乱れる場所、いろいろを見つけた。 いちいちに俺が触ったんだと、刻み付けるようにロイを攻めた。 ロイは、後ろは許してくれなかった。 それだけは絶対嫌だと涙交じりの目で訴えられた。 でも、俺は抑えが利かなかった。 やめてくれといい続けるロイを半ば強引に押さえつけ、前を弄りながら、隙を突いて、ロイのそこに濡らした指をいれた。直後身を強張らせていたロイ、でも俺の指はやつの弱いところをついたらしい、解けるように抵抗をなくしてゆくやつがまた、声を殺してもだえ始めるまでタップリかまった。 まだ硬いそこが少し解れるまで舌と指で構い倒し、俺は、シーツを掴み体を震わせるロイにそっと挿れた。 |
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