◎ roikoi ◎
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気が付いたら、すごく好きになっていた。 「……」 「こんなキモチを抱えた奴と同じ部屋なんて気持ち悪いだろう?」 笑顔を作り、ロイはこちらの顎に手を伸ばしてきた。 「……」 「いつ手を出されるか分からないんだ」 細めた目でこちらを見やるロイ。目の中には怯えがあった。 ゆっくり顔を近づけてくるから目を閉じてみた。 一瞬息を呑むようにロイの動きが止まったが、そっと唇に奴のそれが押し付けられる。 「……」 なんだろう。気持ち悪いとかいう感じはまったくなかった。 目を開けると、眉間に皺を寄せたロイのドアップ。 ぎゅっと目を閉じ唇を動かす。こちらの下唇を甘噛みする姿が見えた。 手のひらが、服の上から胸を撫でる。胸の突起、乳首を捜して這い回る。 知識はあるんだな……。 でも、キスは下手だし、お互いの体の間は子供が一人通れる位離れている。 手を出すくらい好きな相手に言い寄る男のしてることには見えない。 一生懸命欲情する男を演じる(?)ロイがとても奇妙だった。 キスしたいとか、相手に触れたいとか、そういうキモチはあるんだろうが、何かが違った。 顎を掴んで、ぐっと唇を押し付け舌を忍び込ませる。 ロイはぎょっとして目を見開いた。 俺を押しのけようと手を突っ張ってくるが、それを許さなかった。 「……っ」 小さく悲鳴を漏らすロイをソファに押し倒してシャツを引っ張り、さらした服の裾から手を忍び込ませる。 乳首を探し当て軽くいじってやると、肩が持ち上がった。顔を赤くしてロイはこちらの服の裾に手を入れてくる。 唇をずらして隙間を作ってやると、ふう、と大きく息を吐き出す。 「んっ」 きゅっと、乳首をつまむと、苦しそうな吐息が漏れる。わき腹に手を置くと体をふるふると振るわせる。 赤い顔、細めた目、零れる吐息は少し甘さを含んでいる。 「ロイ?」 「……」 呼びかけると、首に手を回されキスをされる。 今後はハナからディープなキス。 喉の奥まで舌が入ってきそうな勢いに噎せそうになる。 くるっと、ロイが体勢を入れ替え俺を下敷きにする。足の間に体を割りこませ、シャツを捲り上げてくる。その背中に腕を回してぐっと力を込める。ロイを動けなくしておいてから、俺は奴の下肢に手を伸ばす。 「!」 ぐっと掴むと体を竦ませ俺から離れようとした。 「な……」 なにをするんだという顔。 「俺のココ触りたい?」 「……」 「もしどっちでもいいとか、そうじゃないって思ってるんだったら、お前の好きは『トモダチ』の好き、なんじゃないかと俺は思う……」 「……それは」 「トモダチの好きならべつに無理してこういうことしなくてもいいんじゃねぇの?」 「……触りたい、気持は……ある、でも、気持悪いだろ?」 「べつにっ」 「……気持悪くないのか?」 「そういえばさ、お前なんでさっきから、『気持悪いだろ?』『気持悪いだろ?』って訊く訳?気持悪かったらちゅーなんかさせない」 「……」 「ここをどこだと思ってる?男ばーーーっかの士官学校だぜ?先輩の命令で泣く泣く尻貸す奴だっているんだ。そんな中に三年いるんだ。今さら気持悪いなんてこれっぽちも思えないね。それに、俺、お前のこと嫌いじゃないし」 「……え?」 意外だという顔。そして、目がうるうると潤んでくる。 つやつやの黒い瞳が俺をじっと見つめ、ついでそらされる。 「どうする?」 畳み掛けるようにきいてみた。 「どうって……」 「おまえは、おれとエッチしたい?俺のここ触って、しゃぶってみたいと思う?」 「……」 きゅうと軽く揉む。ロイはぎゅっと唇をかんで体を小さくする。 「俺は彼女も婚約者もいない。お前はどうか分からないけど、お前が相手ならこの先してもいいけど?」 「……」 「ただ、俺にはお前がしたがってるようには見えない」 「……」 呼吸を整えながらロイは考えているようだ。 薄く開いた唇、赤い頬、ゆっくり上下する胸。奴の体の下で、奴のすこし自己主張してきたものを握りながら、体をくっつけているのは……正直いって辛い。 こっちの体にも変化がおきそうだ。 「なあ、部屋、変わらなくってもいいよな?」 ちょっと唐突だとは思ったが、話をきりだした。 「どっちにしても、俺はお前と離れる気はねえよ?お前が俺と離れて一人になったら、きっと飢え死にする。そう思ったら心配で心配で夜もねむれねーし、結局押しかけていままでどおりメシくえ、風呂は四十分で出でこい、一一時には寝ろ!って言いに行くしな……部屋変わっても変わらなくても同じだ」 「……」 「……」 むく、と、手の中のロイが大きくなった。 「おや」 「……!」 「おうわ!!」 思わず呟いたらロイはこちらの腹に肘を入れてきた。 怯んで手が離れた隙に奴はたっと立ち上がり、今日はこれまで!と言い放った。 言い放って、そのままシャワーを浴びに言った。 暫く、一五分くらいだろうか? のっそり現れた奴は俺の前に正座して、突然すまなかったと詫びてきた。 「正直に言って……あの続きをしたかどうか分からない」 でも、触りたい気持はとてもある……。 顔を赤くし、うなだれ言うロイ。性的なにおいが一切しないその様子に、思わず、触っていいと答えると、奴は信じられないものを見つけた目でこちらを見やった。 その夜。 俺たちは一緒のベッドにねた。 寝巻きは着たままで、ロイは、物珍しそうに、俺の指や、手や、左胸に触ってうっとりしていた。 錬金術師という輩は、咲いた花を見てきれいと思うより先に、発芽の仕組みやらに思いをはせる。 ロイもそうなんだろうと思った。 好き、触りたい。その気持の向こうには何もない。 ただ好きだから触りたい、本能的に自分のものにしたいとか、そういうのはまだないのかもしれない。 子供のおもちゃのように俺の左手を握って寝るロイを、やっぱり気持悪いとは思えなかった。 時々そうして奴の興味が高まって、俺の気持に余裕があれば一緒に寝た。 面倒くさいからマッパでベッドにはいると、奴は嬉々と!はせず、ねまきくらい着ろ!と俺を怒鳴る。 面倒くさいからとそのまま寝にはいると、翌朝はきちんとねまきを姿で目覚める。夜中に奴が着せてくれたんだろうとおもった。 着せ替え人形と人形で遊ぶ子供。 そんな表現がぴったりの日々だった。 どちらかに彼女ができるまでは俺はロイに、俺を触らせてやることにした。 ロイは俺に、自分の昔話を気持の整理が付いたらすることを条件に。 変わった奴だといわれた。 お前みたいに変な奴とはあったことがない。 ロイはそういいながらもとても嬉しそうな顔をしていた。 コイツがこういう性格になった背景を知りたかった。何で吐きながら日記をつけるのか、各界のお偉いさんとの人脈を作るのか興味があった。 そんな出来事の後、暫くはなんだか顔を合わせるのが恥ずかしかった。でもすぐになれた。 平穏な日常が戻ってきた。 ロイは、いいよる奴をボコる日々。 時々ボードゲームに出かけていって、金持ち連中とのコネを作るロイ。 俺も一緒にいくこともあって、一緒に顔を覚えてもらい、なんや、かやと面白い話を聞かせてもらうことが増えた。 俺は丸くなったロイのルームメートとして、ラブレターを頼まれることが増えた。 ロイはいちいち選別して、だれそれはどういうネットワークを持っているとかこれそれは何に顔がきくと分析していた。時々俺宛のも混じっていて、俺が気づかず、ロイの手に渡るときがあった。 そんなときはこっそり奴が始末していた。 宛名を表にくしゃくしゃにしてゴミ箱の上のほうに無造作に置かれている手紙を見つけたときは、コイツは結構抜けてるなと思わずにはいられなかった。 |
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