週番(ピーター・ペティグリュー)
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■ 五日目 ■ (ピーター・ペティグリュー&セブルス・スネイプ4+ジェームズ・ポッター?) 昨日スネイプに怒鳴られたから、今日は不安だった。 約束はちゃらになったりしてないだろうか……。 心配することはなく、昨日と同じくスネイプは僕に協力してくれた。 「ペティグリュー、今日だ。頼むぞ」 スネイプが身元を知りたいと考えているグリフィンドール寮生とあう日。 放課後、旧館の噴水の前で会う。 授業が終わったら僕はそこへ行くことになっていた。 人気のない旧館の廊下を歩いていたらいきなり、あしが動かなくなった。 叫ぶ暇もなく、あたまから袋をかぶせられ、引きずられてどこかの部屋に連れ込まれた。 人の声が渦になって僕に絡みつく。 おまえ、なまいきなんだよ、 ちょうしこくんじゃねえよ、 こうしてやる……、 人の声が渦になってぼくにからみついて、なにかが腹にめり込む。 お腹を蹴られた。 激しく咽る僕を、踏みつける、殴りつける……。 ぱーんっと、何かが目の前ではじけて真っ白になった。 ……。……。……。……。……。……。 「ピーター、ピーター、大丈夫か?」 「……」 ジェームズが目の前にいた。 「……」 「何が起きたんだ?」 「?」 部屋の中はすごい有様だった。 床に人が倒れてる。着ている物は埃だらけでぼろぼろで、中には虫の息の人もいる。 家具は言わずもがな大理石の床も、古いレースのカーテンも、えぐられたように損なわれている。 声を出そうとして、お腹が痛んだ。 ジェームズは無理するなといい、僕を抱え、部屋を後にする。 「人間とっさになればなんでもできるものだな」 「え?」 ジェームズがつぶやいた。 「すごいじゃないか、ちょっと魔法力を爆発させるだけであんなことができる……秘めたる力、眠れる野性……ふふ」 「……」 ジェームズ? 喉の奥で笑うジェームズ。いつもの彼じゃない。 床に視線を落としてドキとした。 床には僕と僕を抱えているジェームズの影が映っているはず、でも、床に移っていたのは髪の長い見知らぬ影……。 「そうおどろきなさんな」 さっきとは打って変わってジェームズ、ううん、そいつは言う。 「知らない人間が城の中をうろついてたら目立つだろう?」 扉を一つ通って、そいつはどこかの部屋に僕を連れて行く。 怖い。急にそんな感情が湧いてきた。 逃げようとする僕のしりをそいつは叩いた。 「騒ぐなピーター、内臓破裂、肋骨骨折、瀕死の君を助けてやろうっていうんだ。ただじゃないがね」 ほこりくさいベッドの上に僕をおろし、ジェームズの姿のそいつは言った。 「ピーター、よくきくんだ。このまま私が出てゆけば君は死ぬだろう。なにせ、君がここにいることは誰も知らない。いなくなったピーターをお友達が探そうと騒ぎ出す頃に君は死んでいるだろう。さっきも言ったが内臓が破裂している。ろっ骨も折れてる。肺に刺さってないから息は苦しくないだろうが、胸の周りの神経は切れてる。痛みを感じないだけで重症だ」 ジェームズの顔で似ても似つかない冷たい顔でそいつは言う。 「どうする?死ぬか?いきたいか?」 そんなの……。 「聞くまでもないか?よし。まず、命を助けよう。そのあとで、君が持ってる自分の力を引き出せるようにもしてやろう。クィディッチで大勢をとりこにするジェームズ・ポッターや女の子に大人気のシリウス・ブラック、あのリーマス・J・ルーピンなんか足元にも及ばない強さを与えてやろう」 もう、誰の影におびえることもない。君自身の力で、他人を翻弄できる。 「人の運命を狂わせる狂気の魅力を引き出してやろう……」 何か言われたけど僕は必死だった。逃げるんだ。逃げるんだ。ジェームズの顔をしたこいつから……。昔おばあちゃんがいっていた、人の魂を食う魔物……。こいつはそうかもしれない。契約してはいけない。杖を手にしてそいつに向ける。そいつは笑って、昔とちっとも変わらない。そう呟いた。 「そうそう、忘れてた。君が大嫌いな可愛いルーピン。ルーピンにめろめろのシリウス・ブラックも、生まれ変わった君の魅力の前に膝を折るだろう」 「……」 「見返りは、なに、ほんの少し私に協力してくれればいい。簡単なことだ」 今すぐとは言わない。時期が来たときに私の求めに応じて集ってくれればいい。 「さあ、ピーター、自分の名前を言うんだ。命と、力と、愛を手に入れるんだ」 ジェームズの姿がゆがんで、黒い長い髪の男が現れる。 整った顔立ち……切れ上がった瞳、昔に見た記憶のある男。 男の肩越しに時計が見える。時計は文字盤が逆で左回りに秒針が動いていた。 鏡? 己の名前に誓って……。 薄くなる意識の中でそんなことを言われた気がした。 「大事無いか」 「……」 気が付くとスネイプがいた。 「ペティグリュー?大丈夫か?」 「え?あ?」 スネイプが心配そうに僕の顔を覗きこんでいる。 「ふう〜」 大きく息を吐きながらジェームズが杖を振るって室内を整えているところだった。部屋のすみには、ロープでぐるぐるにされた人間が四人。 「何が?」 「こやつらがお前を引きずって連れ込むのが見えたのでな」 じゃあ、今まで僕が見たのは……幻? 「……怪我はないかピーター」 左肘をさすりながらジェームズ。かれは眼鏡をかけていなかった。 少し見にくそうに眉をひそめるジェームズ。 「……う、うん」 「そうか、でもマダム・ポンフリーの所に行ったほうがいいな……先に行ってベッドが空いてるか確かめてくる」 ジェームズはそういい放ち、スネイプに後のことは頼むと言い捨てた。 「ペティグリュー」 スネイプが呟くように言う。 「彼だ」 「え?」 「こんなときにすまないが、私の探しているのは彼だ」 彼だとスネイプは走り去るジェームズの背中を指差した。 |
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