週番(ピーター・ペティグリュー)
01)(02)(03)(04)(05)(06)(07

サイトTOPへぽた部屋へ

■ 五日目 ■
     (ピーター・ペティグリュー&セブルス・スネイプ4+ジェームズ・ポッター?)

昨日スネイプに怒鳴られたから、今日は不安だった。
約束はちゃらになったりしてないだろうか……。
心配することはなく、昨日と同じくスネイプは僕に協力してくれた。
「ペティグリュー、今日だ。頼むぞ」
スネイプが身元を知りたいと考えているグリフィンドール寮生とあう日。
放課後、旧館の噴水の前で会う。
授業が終わったら僕はそこへ行くことになっていた。
人気のない旧館の廊下を歩いていたらいきなり、あしが動かなくなった。
叫ぶ暇もなく、あたまから袋をかぶせられ、引きずられてどこかの部屋に連れ込まれた。

人の声が渦になって僕に絡みつく。
おまえ、なまいきなんだよ、
ちょうしこくんじゃねえよ、
こうしてやる……、
人の声が渦になってぼくにからみついて、なにかが腹にめり込む。
お腹を蹴られた。
激しく咽る僕を、踏みつける、殴りつける……。
ぱーんっと、何かが目の前ではじけて真っ白になった。

……。……。……。……。……。……。

「ピーター、ピーター、大丈夫か?」
「……」
ジェームズが目の前にいた。
「……」
「何が起きたんだ?」
「?」
部屋の中はすごい有様だった。
床に人が倒れてる。着ている物は埃だらけでぼろぼろで、中には虫の息の人もいる。
家具は言わずもがな大理石の床も、古いレースのカーテンも、えぐられたように損なわれている。
声を出そうとして、お腹が痛んだ。
ジェームズは無理するなといい、僕を抱え、部屋を後にする。
「人間とっさになればなんでもできるものだな」
「え?」
ジェームズがつぶやいた。
「すごいじゃないか、ちょっと魔法力を爆発させるだけであんなことができる……秘めたる力、眠れる野性……ふふ」
「……」
ジェームズ?
喉の奥で笑うジェームズ。いつもの彼じゃない。
床に視線を落としてドキとした。
床には僕と僕を抱えているジェームズの影が映っているはず、でも、床に移っていたのは髪の長い見知らぬ影……。
「そうおどろきなさんな」
さっきとは打って変わってジェームズ、ううん、そいつは言う。
「知らない人間が城の中をうろついてたら目立つだろう?」
扉を一つ通って、そいつはどこかの部屋に僕を連れて行く。
怖い。急にそんな感情が湧いてきた。
逃げようとする僕のしりをそいつは叩いた。
「騒ぐなピーター、内臓破裂、肋骨骨折、瀕死の君を助けてやろうっていうんだ。ただじゃないがね」
ほこりくさいベッドの上に僕をおろし、ジェームズの姿のそいつは言った。
「ピーター、よくきくんだ。このまま私が出てゆけば君は死ぬだろう。なにせ、君がここにいることは誰も知らない。いなくなったピーターをお友達が探そうと騒ぎ出す頃に君は死んでいるだろう。さっきも言ったが内臓が破裂している。ろっ骨も折れてる。肺に刺さってないから息は苦しくないだろうが、胸の周りの神経は切れてる。痛みを感じないだけで重症だ」
ジェームズの顔で似ても似つかない冷たい顔でそいつは言う。
「どうする?死ぬか?いきたいか?」
そんなの……。
「聞くまでもないか?よし。まず、命を助けよう。そのあとで、君が持ってる自分の力を引き出せるようにもしてやろう。クィディッチで大勢をとりこにするジェームズ・ポッターや女の子に大人気のシリウス・ブラック、あのリーマス・J・ルーピンなんか足元にも及ばない強さを与えてやろう」
もう、誰の影におびえることもない。君自身の力で、他人を翻弄できる。
「人の運命を狂わせる狂気の魅力を引き出してやろう……」
何か言われたけど僕は必死だった。逃げるんだ。逃げるんだ。ジェームズの顔をしたこいつから……。昔おばあちゃんがいっていた、人の魂を食う魔物……。こいつはそうかもしれない。契約してはいけない。杖を手にしてそいつに向ける。そいつは笑って、昔とちっとも変わらない。そう呟いた。
「そうそう、忘れてた。君が大嫌いな可愛いルーピン。ルーピンにめろめろのシリウス・ブラックも、生まれ変わった君の魅力の前に膝を折るだろう」
「……」
「見返りは、なに、ほんの少し私に協力してくれればいい。簡単なことだ」
今すぐとは言わない。時期が来たときに私の求めに応じて集ってくれればいい。
「さあ、ピーター、自分の名前を言うんだ。命と、力と、愛を手に入れるんだ」

ジェームズの姿がゆがんで、黒い長い髪の男が現れる。
整った顔立ち……切れ上がった瞳、昔に見た記憶のある男。
男の肩越しに時計が見える。時計は文字盤が逆で左回りに秒針が動いていた。

鏡?

己の名前に誓って……。

薄くなる意識の中でそんなことを言われた気がした。

「大事無いか」
「……」
気が付くとスネイプがいた。
「ペティグリュー?大丈夫か?」
「え?あ?」
スネイプが心配そうに僕の顔を覗きこんでいる。
「ふう〜」
大きく息を吐きながらジェームズが杖を振るって室内を整えているところだった。部屋のすみには、ロープでぐるぐるにされた人間が四人。

「何が?」
「こやつらがお前を引きずって連れ込むのが見えたのでな」
じゃあ、今まで僕が見たのは……幻?
「……怪我はないかピーター」
左肘をさすりながらジェームズ。かれは眼鏡をかけていなかった。
少し見にくそうに眉をひそめるジェームズ。
「……う、うん」
「そうか、でもマダム・ポンフリーの所に行ったほうがいいな……先に行ってベッドが空いてるか確かめてくる」
ジェームズはそういい放ち、スネイプに後のことは頼むと言い捨てた。
「ペティグリュー」
スネイプが呟くように言う。
「彼だ」
「え?」
「こんなときにすまないが、私の探しているのは彼だ」
彼だとスネイプは走り去るジェームズの背中を指差した。


01)(02)(03)(04)(05)(06)(07

サイトTOPへぽた部屋へ