週番(ジェームズ・ポッター)
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■ 七日目 ■(ジェームズ・ポッター)

花の匂いがした。
目を開けるとすぐ隣にスネイプの頭があった。
「……」
丁度わきの下当たりに頭がある。
眠っている。ふうっと、髪の毛に息を吹きかけてみた。
反応はない。良く眠っている……。
あんなに俺のことを嫌ってるスネイプが、俺の隣で熟睡……。
……。
寝顔が気になった。
そっと頭を上げて顔を見ようとしたら、ぶわっとスネイプの頭が上がった。
どきりとした。
とっさに目を瞑った。そうしたら、どん、と肩をどつかれた。
どつかれた、と思った。右肩が圧迫されている。

そっと目を開けてみたら、スネイプの後頭部がすぐそこにあった……。
思わず叫びそうになって、でも堪えた。
スネイプはもぞもぞ動いて俺のほうを向く。閉じられた目……完璧に眠っている。
ぐり、ぐりと、頭が俺の右肩を上りはじめる。
肩では位置が悪いのか、頭はベストポジションを探して肩をよじ登り、鎖骨の下でとまる。
わきの下のうえ、胸の上、鎖骨の下……。そのあたりで止まっている。
「……」
俺の胸(?)を枕にスネイプは眠っている。
二人分の体温で暖められたのか、彼の使っている香煙の匂いが、シャンパンのような甘酸っぱい花の匂いが強くなる。
片腕がすいっと伸びて俺の左手を掴む……。
瞼がぷるぷる動いている。少し待っているとそれは止まった。
きっちり口を結んで、熟睡?しているんだろうか?呼吸は静かで、表情は穏やか。
ときどき口の両端が持ち上がる。楽しい夢を見てるようだ。
「……」
しかしこの状態は横から抱きつかれた状態。俗に言う抱き枕状態だ……。
スネイプは俺を抱き枕にして眠っている。
「……」
頭を傾けてみる。彼の髪が俺の頬にあたる。
あんなに毛嫌いしている俺を抱き枕に眠るスネイプ。
なんだかどきどきしてくるのは、だんだん右腕がしびれてくるから、だろうか?
いま、何時くらいだろう?
そんなことを考えながら、じっとしていたら、いつまにか眠っていた。
「おきろ!!」
耳もとで叫ばれ、驚いた。
おどろいてベッドから落ちた。
両手両足を縛られていたので無様にこけた。
みると、ねまきの上にローブを羽織ったスネイプが恐ろしい顔をして俺を睨んでいた。
部屋のカーテンの隙間から、うっすら暗い朝の光が差し込んでくる。
明け方?だろうか?
しんしんと冷えた空気が部屋を覆って、急な寒さに震えた。
スネイプは杖を振るって俺の戒めを解いた。浮いている俺の服を掴んで押し付けてくる。
「静かに音を立てずについて来い」
そうってしんと静まり返ったスリザリン寮内をこっそり抜けて、外へ出た。
「どうやらアレルギーは問題ないようだ。これでめでたしめでたしだ」
「うん……あの」
「……気をつけて帰れ……誰にも見つかるなよ」
言残しスネイプは扉を閉めた。
真冬、大理石でできた建物に、夜着一枚でだされた。
誰にも見つからないように、俺は寮に帰った。靴だけを履きローブをはおって、薄着のまま痛いほど冷えた廊下を歩いた。
足先、指先の感覚がなくなる。震えながら、なんとか寮にたどり着いた。
絵画のマダムはまだ眠っていた。俺は抜け穴から寮にもぐりこみ部屋に帰った。
久しぶりに、ルーピン、シリウス、ピーターのベッドのカーテンが閉まっていた。
戻ってきたんだ……。という安堵感と同時に、三人への言い訳を考えなきゃならなくなった事態になんとなく憂鬱になる。
いえない。
昨日はスネイプの所に泊まりました。なんて、両手足縛られて抱き枕になってきました、なんて……いえない。
願わくば三人が気付かないことを祈るしかない。
「はあ……」
そっと自分の陣地に戻って、カーテンを閉めて密室を作って、そうして初めて俺は左肘が熱を持っているのに気付いた。
俺はスネイプの夜着を脱いだ。
こっそり洗ってかえさなくちゃな……。なんて思いながらベッドのうえに広げた。
自分の夜着にきがえて、思いつきで、借りた夜着の隣に横になってみる。
変な笑いがこみ上げてきた。
なにをしてるんだろう。
まだ花の香りが残っている夜着を俺は畳んで枕の下に隠した。
そのままうとうとした。
気がつくとカーテンの向こうからシリウスの声が。
あけると、もう起きる時間になっていた。
すっかり全快したらしいシリウスが制服姿で立っている。
迷惑かけた。助かった。
そういうシリウスは唐突に?の顔をして俺に顔を近づけてくる。
「この匂い」
「……ん」
言いながらシリウスは鼻をひくつかせる。
「なんか、どっかでかいだような……」
「……」
鼻のいいヤツだ。
なんてごまかそうか考えていると、シリウスは俺の左肘に目を留める。
「どうしたんだ?スゲー腫れてるぞ」
「ああ、ちょっと、ベットから落っこちて」
「ああ〜〜〜」
とシリウスは「納得」したような顔をした。
とりあえず、俺は着替えることにした。
肘は腫れて腕を曲げると痛かったけど、気にせず着替えた。
「……」
ネクタイがない。
落としたか?それとも忘れてきたか……。
平静を装って、スペアを出していると、ルーピンとシリウスが不思議そうな顔をしてこちを見ていた。
皆で朝食に行く。
食堂ではスネイプが相変わらず、何もなかったかのように大勢のお供を引きつれ自分の席に着く。いつものグレープフルーツジュースを飲んで、いつもと変わりなく食事を取っている。俺もフツーに食事をして、授業を受けて、見回りをして、最後の週番を務める。
たいした事件も騒動もなく、相変わらず見世物状態だったが夕方無事に週番が終わった。報告でマクゴナガルの所にゆき、ピーターを呼ぶように言われた。
次の週番はピーターらしい。
しかし、事情で風呂に入ってない俺の体からは、一日中スネイプの香煙の匂いがしていた。
ああ、終わってみればなかなか楽しい週番だった。
でももう、二度とはゴメンだ……。

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