週番(ジェームズ・ポッター)
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■ 六日目 ■(ジェームズ・ポッター)

「パールラディッシュは、アレルギー持ちが多いのだ……」
私の父もそうだとスネイプはぶつぶつ呟きながら、俺をスリザリンの自分の部屋に連れて行った……。
ベルベットのみどりのカーテンとじゅうたんが月夜の草原を思わせる光沢を放っているスネイプの部屋。
なんとなく、彼のイメージは「紫」だったから、普通の部屋の有様にちょっと驚いた。
きちんと片付けられている本棚。机の上にも絨毯にも塵一つ落ちてない。
白い百合の鉢植えが窓際にあり、マンドラゴラの子株と思しき鉢植えがいくつか……。
「なにをきょろきょろしている?!」
「え……いや……塵一つ落ちてないなと……おもって」
俺たちの部屋とは大違いだ。
「きちんと片付いていて、清潔で、そして花の香りがする……女の子の部屋みたいだ」
「……」
みるみるスネイプの顔が強張り、目が釣りあがる。
「ポッター……今なんといった?」
ああ、最後の言葉は余計だった。
「……ええと聖母マリアのように信心深いんだなあって」
苦し紛れについ言っていた。
「?おまえのいっていることは意味が分からない」
「ええと、ほら、『清潔は信仰に似ている』っていうじゃない?窓際には聖母マリアの象徴の白い百合の鉢植えあるし……そういえば、ここ一人べや?」
「そうだ」
俺たちの学年で一人部屋というのはめずらしい。
スネイプはそうだといい、こちらにちかづいてくる。
「まあいいポッター」
ゆっくりとみどりの絨毯を歩くその姿に見とれた。
だから傍まで来たスネイプがすらりと杖を抜いてこちらの顎先に近づけたのに気付くのがおくれた。
「え?」
「『眠れ』」
ぱっと杖からのびた白い光が瞬くように閃いた所までは覚えている。

気がついたら、暗い部屋で、わらのベットの上に寝かされていた。
両手首に手錠がはめられている。そして片足には鉄の輪。
両方壁から伸びた鎖……につながっている。
壁は煤けた石組みで、鉄格子のはまった窓から見えるのは白い空。
なんだ、コレ……。もう一度あたりを見渡すが、何度見回してもココは……。
牢屋?
「気がついたか」
といつの間にかスネイプが立っていた。
「なにコレ?」
両手を上げながら訊ねた自分の声がイヤにかすれてる。
「飲むがいい」
とスネイプは椀になみなみと冷めた紅茶を注いでくれた。
すごく喉が渇いていた。二杯、三杯勧められるままに飲み干す。
「ここにおいて置くから欲しくなったら飲め。それからコレは食事だ」
「……」
食事だと、レモンの入ったかごを渡された。
「レモンだけ?」
かごを探ってみてもレモンしかない。
「そうだ」
「なんで?」
なんでこんなところに、縛り付けられて、紅茶とレモンをあてがわれないといけない?
「ここはどこ?」
「スリザリン寮の私の部屋の隠し部屋だ。西の塔につながっている」
「ああ、道理で。なんか見覚えがあると思った。それで、俺は何時までここに?一週間?一年?それとも一生?」
「今日だけだ」
スネイプは言った。
「今日だけ辛抱しろ」
「……」
と、スネイプにしてはいたわりに満ちた言葉をかけられた。
「今夜発症しなければお前は大丈夫だ……すくなくともブラックの二の舞は踏むまい。……私としてもお前の看病で一週間も付き添いたくない」
「俺は……そっちの方がいいけど……」
「……?」
「こんな牢屋みたいなところに一日だっていたくない。わらのベッドしかないし、夜は寒そうだし……」
「そもそもポッター、貴様が、私の忠告を無視してアルコールを摂ったりするからこういうことになるんだ」
「そもそも君が理由も教えてくれないで『アルコールを摂るな』っていうから……気になって試してみたくなったんじゃないか……」
「……気になった……?それだけの理由で……」
あきれてものが言えない……そんな様子のスネイプは俺の顔をじっと見つめてため息を付く。
理由をはなさなかった自分にも……原因がないとはいえない……。
彼は多分そう考えている。
「……お前はパールラディッシュの産毛を吸い込んだ可能性が強い……。お前だけではない。ルーピンも、ペティグリューも……ブラックから感染した可能性が高い」
「そのシリウスがパールラディッシュにハマったのはどうして?」
スネイプの温室でシリウスは感染した。それを知っているのに……俺は聞いてみた。
「……」
スネイプは言葉を詰まらせ、息を一つ呑む。目を閉じてため息を付く。
「ごめん。それはいいや……」
「……おまえは……いじわるだな……」
「え?」
「……」
スネイプは何も言わなかった。鍵を取り出してこちらにほうる。
「早くしろ」
腕組みしてスネイプは機嫌悪く言い放つ。
塔から一転、また、スネイプの部屋に戻ってくる。
どういう設定がしてあるのか、重い木の扉をくぐったら、スネイプの部屋にもどっていた。
唇に指を立て、スネイプは「静かに」の仕草をする。
忍足でドアへより、そっと耳を当てる。外の音を聞きながらスネイプは瞳をめぐらせる。
俺はじっとしていた。スネイプが抜き足で戻ってきてチェストからねまきを取り出し、そっと戻ってきて俺に渡す。
そっと、俺を押すから、俺は押されて、後ろ足で移動する。
とん、とふくらはぎになにか、やわらかいものが当たる。
それがベッドだとわかったのは、スネイプにどんとおされて、倒れたから。
とんとん、と扉が二回ノックされる。
「ぜったい何があっても喋るなポッター」
短くするどく言い放ち、スネイプは杖をふる。
ふわっと何かが俺に向かって降りてくる。
「どうぞ」
スネイプが言うのと同時に、ドアが開きスリザリン生が二人入ってくる。
「今日はもうお休みになりますか?」
「ああ……そうしようと思う」
「……では……」
ではお茶をともう一人がいい、お茶の支度をし始める……。
寝る前にスネイプはお茶を飲むのか。かちゃかちゃと陶器のぶつかる音。
スネイプが眉間に皺を寄せてのっそりと現れる。目が、あった。
ざっと彼がカーテンを引く。
一瞬、躊躇するように動きを止めるが、スネイプはこちらに背中を向けて服を、脱ぎ始める……。
着替えだ……。ローブを脱いで、ネクタイをとって、シャツのボタンを外して……動くなといわれたのでじっとしていた。じっとして、目の前で白い夜着に着替えるスネイプを見ていた。彼が着替え終わってこちらを振り帰ったのでとっさに目をつぶった。
しゃっと、カーテンが開かれる。隙間から、紅茶の良い匂いが滑り込んでくる。
動くなといわれたけど、そっと体を浮かせてカーテンの隙間から外を見た。
ソファにすわり、湯気のたつ紅茶にふうふうと息を吹きかけすするスネイプがいた。
紅茶を一気飲みしてスネイプは、今日はこれでもう休むから下がってくれて構わないと……耳を疑うことを行った。
下がってくれて構わない……って?
まるで召使いか何かに言うようなセリフ……。
ゆっくりとスネイプは、カーテンをくぐってやってくる。また一瞬動きを止めたけれど、彼はベッドに入ってくる……。シャンパンのように舌を打つ甘い香りが……。
すぐ、隣にスネイプの顔がある………。叫びそうになって、渡された夜着を掴んだ……。
少し間があって、灯りが落ちる。ドアが閉じる音がしたが、スネイプは動かなかった。
横目で見ると目を閉じている。眠ってしまったようにみえたが、ばっちっと目を開けて彼は起き上がる。
「……はあ」
ため息を付いてスネイプは、唇だけ動かしていった。
ゆっくり音を立てないようにして着替えろ。脱いだ服はその辺に浮かせておけ。
スネイプは懐からレモンを一個だして、仕草でかじるように……。
俺は齧った。涙が出るほど酸っぱかった。
着替えて、スネイプの言うように服を宙に浮かせる。
「今日はこれでもう眠るが、妙なまねはするなよ……」
「……」
スネイプは杖を振るって俺の手と足を縛った……。
その夜。俺とスネイプは仲良く「11」の形で眠った。
夜中に何度かスネイプが起き上がって俺の顔を覗くのでその度に目を覚ました。
額で熱を測ったり、脈を診たりしてくれた……。俺は動かなかった。
眠い。うとうとしながら、ポッターと呼ばれゆすられたきがしたが、まぶたが重くて動かなかった……。

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