週番(リーマス・J・ルーピン)
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■ 3日目 ■

今日はとても忙しかった……。
授業全般が休講気味なこと、体調不良者が日を追うごとに増えていくこと、なんともいえない暗い雰囲気が学校中を覆っていてそのせいで、衝突や、揉め事があちこちで起きた。
迷子六組、脱走者四組、情緒不安定で学校内をさまよう「流離」六組。(下級生、同級生、上級生、合計48人)。
途中で意識がなくなった。
他人を説得したり、捕まえたり、救出した記憶はうっすら残っている。
ホグワーツは流離われると巨大な迷路だって事がよ−く分かった。
大体の力仕事はシリウスがやってくれたので、夕食までは起きていられた。
夕食後は、宿題もそこそこにベッドに突っ伏して、シリウスに「眠るなら靴くらいぬげよ」と声をかけられ、返事をしたのは覚えている。
「……」
気がつくと夜中で、僕はねまきでベッドに入っていた。
髪の毛も解いてある……。
そういえば、シリウスが着替えさせるから脱がせるぞとかいってたっけ……。
いま、何時なんだろう?
ピーターも、ジェームズもいない六人部屋、シリウスのかすかな寝息だけが闇に吸い込まれていく。
宿題がまだなので、ペンと羊皮紙一式もって談話室へ降りてゆく。暖炉の火がちろちろと燃える中、僕は宿題をする。
「……」
名前をよばれた気がした……。
でも、気がしただけで、誰も僕を呼んでないのは、分かった。
耳に意識を集中する。
満月を翌週に控えた今の時期は、五感が鋭くなる。そう、今の僕は、談話室にいながら寮の外で針が落ちる音も聞こえる。
寮の外の誰かがいる。まるで時計の振り子のような規則正しい足音をさせて、その人はあるきだす。生徒じゃない。靴の音が違う。
気になって僕は抜け穴から外へでた。
こつ、こつ、こつ。響く足音を追ってぼくは廊下を歩く。食堂、医務室、そして、足音は旧館へ。今は使われていない部屋の前で止まる。
僕はそっと、階段を上がって踊り場でとまる。
気配が、急に二つになった。……。
「……これを、外せばいいの」
聞き覚えのある声が耳に届いた。
ピーターだ。
「そう、その邪魔な封印を君の手ではずしてくれ」
もう一人の声が、頭の中に直接響いた。
まがまがしい、声。
それを耳にしたとき、僕の足はその場に張り付いたようになった。
声というのも変だけど、それは声と形容するのが一番しっくりくるものだった。
「はずれない」
かちゃかちゃとドアノブをまわす音。
「大丈夫だ、きみならできる、いや、きみにしか出来ないことなんだ、今日、この夜に……」
「ピーター!!」
僕は叫んだ。
叫んで思い切り足ぶみをして、階段を上がった。
ピーターは、誰かと一緒にいた。
黒い長い、真っ直ぐな髪をして、髪と同じ色のケープを纏った男。
顔に見覚えはないけど、匂いに微かな覚えがあった。
「僕にしか出来ない……僕が」
「……」
男は何も言わずに薄く笑った。
ピーターの肩に手を置いてそして唇だけ動かしていった。
もうすぐ 全てが うごきだす。
すべては 遠い昔から 決められていたこと いまさら それを どうすることもできない
ピーターの指がドアノブに巻きついたミントにさわった。
すがすがしいミントの香りが周囲に広がる。
こう と、遠くで鳥が鳴いた気がした。

男は舌打し、ピーターを背中越しに抱きしめた。
耳もとで何かをささやいて、ピーターはうなずいている。
ぼくは、なぜそうできたのか、わからないけど、男とピーターに近寄っていき、ドアノブからミントをはずして、それを男に投げた。
「……」
男はローブを翻して一瞬で掻き消える。
「……」
「ピーター」
「……」
ピーターはそのばに座り込む。
ぼっと、床の一点を見つめている。
ぶつぶつと何かを呟く彼の体は、火のように熱かった。
僕はそれとは逆に寒くて仕方なかった。
ピーターをたたせ、医務室まで送ろうと階段を下りたら、校長先生と、マダム・ポンフリー、それに、『闇魔防』の先生、マクゴナガル先生と鉢合わせした。
「怪我はありませんか?」
開口一番言われた。僕ははいと答えた。
ピーターはマダム・ポンフリーに連れて行かれ、僕は校長先生につれられ、寮へもどる。
説明は一切なかった。
でも、戻りしなドアのまえにたった、『闇魔防』の先生の難しい表情から、さっきのはとてもヤバイ事だったのかもしれないと思った。
「どうしてあそこにいったのかね」
僕はあるがままを答えた。
校長先生はふむ、ふむと相槌をくれ、そして、最近体調で何か変わったことはないかね?ときいてきた。
「いえ、健康そのものです」
「それはよかった。じゃが、こんな夜はであるかず、枕もとのミントの香りで深く眠るのがよいじゃろう」
頭に手を置き校長はそう言って、僕を寮の前まで送ってくれた。
宿題を片付けて、僕はベッドに入る。
シリウスの規則正しい寝息を聞きながら、枕元においたコップを眺める。
コップには、スネイプからもらったミントが入っている。
いいかおり、そして、頭がはっきりしてくる。
ピーターと一緒にいた、あの黒髪の男はだれなんだろう。そして、匂い。
香水または香煙をつかっているのか、彼からは何か嗅ぎ覚えのある匂いがした。
ピーターと、男、ミスターX、ミスターは、いまホグワーツでおきているこの事件に関係しているんだろうか……。
一番心配なのはピーター。
ピーターは大丈夫なんだろうか。

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