週番(リーマス・J・ルーピン)
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■ 1日目 ■

「今週の週番はリーマス・J・ルーピン、あなたです」

シリウスもジェームズもピーターもいわれただろうセリフを僕もマクゴナガル先生から聞かされた。
今週週番のピーターが昨日から熱を出したので、繰上げで週番になった。
先生が僕らに代わりばんこに週番をさせる理由を考えてみた。
先生は適任者を探しているらしい結論に達した。
シリウスやジェームズは強力なカリスマがあるとおもう。
シリウスはどちらかといえば黙って俺に付いて来いタイプ。
細かい説明がニガテで、短気な面が目立つ。加えて人の好き嫌いが激しい。
それが他人の反感をかう恐れがある。
事実シリウスはファンも多いけど敵も多い。
ジェームズは、ナンバーワンよりナンバーツータイプ。
彼は周りの動向に非常に敏感。騒動を放置しておくこともできる。
でも、人に任せないでなんでも自分でやってしまうところも多々ある。
それが悪いということじゃない。
人によっては自分は信用されていないという感覚を植えつけられる。
知らないうちに敵を作っている。そしてそれにもジェームズは気付く。
ピーターは度胸がつけば適任だと思う。
適度に控えめで、丁寧で、彼は根気強い人。
でも必要以上に自分を卑下するところがある。
高すぎる理想が彼から活力を奪っている。
彼の中の理想と、現実との差に折り合いをつけることができれば、もっと違うふうに過ごせると思う。

週番仕事に入る前に、シリウスとジェームズに様子を聞いた。
騒ぎそうな人リストをもらった。
一日目は様子見でこれといったことはしなかった。
魔法薬学の授業があったけど、ショー先生はまだ具合が悪い。
『闇魔防』の先生の代理授業があった。
先生が口頭で言う材料と作り方を正確にまねして薬を作るというもの。
授業中に先生のくちから「人狼の体毛」の言葉が出たときには一瞬冷としたけどそれ以外はまったく問題なく授業は終わる。
後片付けをして教室に鍵をかけてそれを返しにいったら、病気で寝ているショー先生の食事の世話を『闇魔防』の先生がしていた。
普段は『闇魔防』の先生が近づくだけで見るからに「いや」そうな顔をするのにこのときはなすがままだった。ショー先生はとても具合が悪そうだ。
『闇魔防』の先生とショー先生は同級生だそうだ。
余談だけど、二人を見ていると僕はジェームズとスネイプを思い出す。
スネイプがジェームズを拒絶する様が、ショー先生が『闇魔防』の先生を拒絶するのにとても似ている。
嫌いな人に優しくされたり、世話を焼いてもらうのはなかなかのストレスだと思うけど……そんなこといってられないくらいショー先生は具合が悪いんだろうか?
ショー先生がいらいないと残したパン粥の残りを、先生は同じスプーンで食べた。
ショー先生はぼんやり目をあけてそれを眺め、そして目を瞑った。
薬だといって、こう、ミミズ色の液体を飲ませようとする先生。
ショー先生はおとなしく口をあけて、死にそうなくらい眉のよった顔をして薬を飲んでむせた。口直しにとだされたすったりんごをショー先生は全部食べた。
お休みと額を触る先生の手を、ショー先生は頭を振って払った。
一部始終を見ていた僕は、落ち着かない気持ちになった。
ふと、『闇魔防』の先生はショー先生のことが好きなのかと思った。
先生は僕にホグワーツの中でなにか見過ごせない出来事がおきつつあると、意味深なことを言い、僕に気をつけるようにといった。
そしてショー先生の病気はピーターと同じ『呪病』だということも。
何かが起きていると、『闇の魔法に対する防衛術』の先生はいう。
僕はそれが気になる。でも推測すら付かない。
用事を済ませてみんなの所にもどる。
僕の周りには人垣ができる。
シリウスの機嫌がすこぶる悪くなった。
でも、いつもみたいにだれかれ構わずガンを飛ばさなくなったのでそれはありがたかった。
と、はしらのところにいるジェームズが青い顔をして左肘をさすっているのを見つけた。
どうしたのか聞いた。
ジェームズはちょっとねとあいまいに笑った。
さすっている左肘が気になったので、ジェームズに見せてといおうとしたら、気配を察したのか逃げられた。なので、夕食後、シリウスに言ってジェームズを捕まえて腕をまくってもらった。
「うわ、おまえ……めちゃめちゃ腫れてるじゃねえか」
ジェームズの左肘は赤紫に変色している。
「……」
「痛いだろう?なんでこんなになるまでほっといた?」
「……そんなに痛くなかったんだ……」
「うそつけ」
「……うそなんかついてない」
「ほーーーーー」
問答無用でジェームズは医務室送りになった。
僕は、いまピーターの治療に使われている薬草の匂いで気持悪くなるからとシリウスに留守番を言い渡された。
暫くして帰ってきたシリウスはジェームズは入院だといった。
マダム・ポンフリーに見せたら、こんなになってるんだから相当痛かったでしょうと言わたそうだ。。
日を見て膿を出す手術をすることになったらしい。
ピーターからだいぶ離れたベッドに、ジェームズは配置され、痛み止めの薬を飲まされたそうだ。
ピーターの傍にはスネイプがお見舞いに来ていて、ジェームズのことを穴の開くほど眺めていたそうだ。
「……こんなときになんだけど」
「ん?」
「ふたりっきりだよな……」
「……そうだね」
「……」
シリウスが口の端を引き上げ、微笑する。
「明日も早いから……もう寝ようか」
「……」
「ねよう、ねよう」
「……」
「いや、明日も早いし、監督生代理は体力勝負だから、変な意味じゃなく、ねよう」
「変な意味じゃなく、ね?」
着替えて自分のベッドに入って『闇魔防』の先生の言う「見過ごせない出来事」を考えながら僕は眠った。
すとんと眠りに落ちて、朝まで目が覚め中なかった。

監督生は体力勝負……みたいだ。

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