◎ Batuichi first ◎
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「人の顔、まじまじみるなよ」 試験管を掴みながらシリウスはこちらをさりげなく凝視しているジェームズに言った。 「わるい、つい」 「気色わるいんだよ」 鍋に、人食いナメクジの涙をぶちまけながらシリウス。 やり場のない恥ずかしさのせいでジェームズの顔をまともに見れない。 「大体お前がいきなり触るから……。」 「ん?」 「ルーピンは触られるの嫌がるから俺だってめったにしないのに……お前ときたら遠慮なくぺたぺた、ぺたぺた……」 ルーピンがそんなに嫌そうじゃないのも腹立たしかった。 俺は実はルーピンに嫌われてるんじゃないんだろうか? まだ告白もしてないから、ルーピンが自分の気持ちを知らないのは仕方ないとしても、ジェームズはよくて自分は嫌がられる……その事実にシリウスは打ちのめされていた。 「なあ、ジェームズ」 「なんだ」 鍋をかき回しながらシリウスは聞いていた 「俺、女々しいか?」 「どっちかって言うと雄雄しいほうじゃないか」 「鬱陶しい奴かな」 「すごーく恋してるんだなーって思うよ」 「でも……!」 何? ジェームズの言葉にシリウスは顔を上げた。 「ルーピンが好きなんだろう?」 ジェームズ・ポッターは教会にいる牧師そのものの穏やかな表情で自分を見つめ言い放った。 「な、なんで、何で分かったんだ?」 「おいおい」 お前はばかか?という顔をされた。 「見てて分からないのはピーターとスネイプ位だと思うぞ。あれっだけ嫉妬丸出しにすれば嫌でも気づくって」 「う」 言葉に詰まった。 ぐわーと一気に血が巡り、頬が、額が、顔が熱くなる。 まずい、真っ赤になってる……。とにかく、落ち着かないと……。 シリウスはゆっくり深呼吸する。 「たのむ」 「このことは誰にも言わない。特にルーピンは黙ってる。うすうす勘づいてるだろうけど、本人から告白されるのと周りから聞かされたんじゃ全々違うからな」 微笑む友の目は優しさにあふれていた。 「そのかわり、首尾を聞かせてくれよ。逐一なっ」 優しいと思った友の瞳には状況を楽しむ色が浮かんでいた。 「ひとごとだと思いやがって」 「大変なのは分かるけどひとごとだ」 「このっ ― 」 「おーこわっ」 柄杓を振り上げるシリウス。ジェームズは大げさに逃げて見せる。 シリウスは気づいた。今までジェームズが立っていたところ、足元には彼の鍋がある ― その空間に、一人の生徒がしゃがみこみ両手に何か持っているのを。ジェームズが急に退いたせいで丸見えになった生徒は右手に杖、左手には渦巻状の物体を持っている。 フィリバスターの長々花火だ。 気づいたときそいつは、点火したばかりだった。 「エクスペリアームス! 武器よ去れ」 押し殺したシリウスの声に驚いたのか、そいつは後ろにひっくり返り尻餅をついた。杖の先から忘れな草色の光がほとばしり花火に当たる。左手の点火済み花火が天井に跳ね上がる。 シリウス、ジェームズ、近くにいたグリフィンドール生が見守る中、花火はくるくる回転し、火花を燻らせながら空間を滑るように教室の隅へ落ちてゆく。目で追うみんなの視線がルビウス・ショーの後ろ姿を捉えた。誰かが先生危ないと呼びかけるが聞こえないのか、ショーは振り返りもしない。 ぽちゃん。 かすかな水音。 ショーの正面から茶色の水柱があがった。 オートクチュールのローブ、その場にいた生徒に茶色の液体がふりかかる。薬をかぶったものたちが笑い出した。 スリザリン生の一角から響く爆笑、高笑、忍び笑いを、薬をかぶらなかったものたちは呆然と眺めていた。 シリウスの視界に薬品棚から瓶を持ち出すルーピンが映った。 それを大きく口を開けて騒動を眺めるピーターに手渡し二言三言つぶやく。ピーターははじめ合点がいかない顔をしていたが意味が通じたのか笑顔になって、体をくの字にまげて笑うショーの下に駆け寄る。 |
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