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ジェームズとスネイプはうまくいっているようだ。
僕たちの仲も変化はない。
二人きりの夜は、相変わらず裸に剥かれたほうがましな夜が続いている……。

ジェームズとシリウスが相談して、四人でホグズミートの移動映画にいって、ジェームズがはじめてキスできたとうっとりしたような顔をして戻ってきて……。
不意打ちでキスしたせいかスネイプが怒って目を合わせてくれない……と泣きそうになって、とにかく謝り倒して……そのうちスネイプもジェームズに情が移って、二人は両想いになれて。

やがてジェームズは夜遅くにしか部屋に戻ってこなくなった。

話をすることがたくさんあるとジェームズは毎日スネイプの元に通っていた。
そのうちスネイプの親衛隊に見咎められるようになり、スネイプがジェームズの元に通うようになり、二人はジェームズのベッドの周りにカーテンを巡らせ作った密室で長々話こむ。
スネイプがお茶を入れたからとおすそ分けを貰うようになり、こちらがお菓子のおすそ分けをするようになり、なんとなく四人一緒にいることが多くなった。
カーテンの向こうとこちら側だったけれど……。

あるときスネイプが、クィディッチに行くジェームズにキスをしていたのを見た。
ジェームズより少し背の高いスネイプはジェームズの顎に指を掛け仰向かせ、じっと彼を見つめていた。
ふっとその目が、視線が緩む。その目の中にシリウスが僕を見るのと同じ色を見つけどきりとした。
早く帰って来いとスネイプは威圧的に言い放ち、次いで、怪我をしないように気をつけてくれと懇願する。
ひしとジェームズに抱きつきスネイプは自分から唇を寄せる。
僕はその時、とうとうシリウスにこんなことされるくらいなら……あんな目で見つめられるくらいなら裸に剥かれて部屋の外にほうりだされた方がマシだとつい言ってしまい、シリウスを怒らせ、本当に裸に剥かれ、寮の外に放り出されていた……。
シリウスが怒りに燃える目で髪で体を隠す僕を睨みつけ、自分の着ているローブを脱いで投げてきたので、それを着ていた。

物陰に隠れている僕に二人は気が付かなかった。

好きだジェームズとスネイプは艶めいた声でささやく。
ちゅっと音を立ててスネイプはもう一度ジェームズにキスを落とす。
今夜はスリザリンに来てくれと……スネイプはジェームズにすがるようにささやく。
ジェームズの顔は見えなかった。でもうなずいた。
やわらかいところを歩くようにジェームズはふらふらと左右に揺れながらいなくなった。
そしてスネイプは隠れている僕を見つけ、その有様を見てどうしたとあわて、裸の僕を見てさらに絶句して……抱えるようにグリフィンドール寮に連れ込もうとした

部屋には帰れない。

そういうとスネイプは何も言わす杖を取り出し、ローブのサイズを直してくれスリザリン寮・彼の部屋に連れて行ってくれた。

シリウスとけんかをした。
シリウスを怒らせた。
スネイプに僕は零していた。
人狼のことは言えなかったから、心苦しかったけどうそをついた。
完治するのが難しい病気にかかっていると。そこだけ変えて今までのことを全部話した。
視線に抱かれていることも……。
「なるほど……」
スネイプは呟きお茶を入れてくれる。ハーブティ。甘いシャンパンのような味。それは腹のそこが落ち着く味だった。
「お前は、ブラックが好きか?」
「……うん」
「もし、お前がその病に掛かっていなかったとしたらどうだ?今回のブラックの申し出をおまえは受けたか?」
「……」

もし僕が人狼でなかったら、シリウスの求めに応じたか?

「……分からない」
「……では、飛び込んでみるしかないのではないか?」
「……だから病気が」
「感染率が極めて低いのであれば、防衛すればいいだろう?話を聞く限りでは粘膜感染ではなく血液感染のようだ、怪我をさせないように手袋をすればいい。キスは意識のあるときに限ってするようにすればいいだろう。そこだけ守らせればいい」
そこでスネイプは視線をあちらへ向けうっとりとした顔をした。
「愛する人がいるというのは、本当に幸せなことだなルーピン」
何を思っているのかその顔はやけに艶めいていた。
「それを教えてくれたのはお前たちだ……」
スネイプは濡れたような艶のある目で僕を見やる。
「ブラックに見られているとき、気持悪くは無かったのであろう?」
「……うん」
その逆だった。
意識が飛びそうなくらい気持ちよかった。
そして思った。僕がいいと言う前にシリウスの手が僕の服をはいで服の内側に手を滑り込ませてきたら、それはそれでしかたないなと……。
シリウスだったら……、……、……そうされても仕方ないと思える。
そうしてくれてもかまわないと、僕はだんだん思い始めていた。
そんな自分を認めるのが、イヤだった。
それを認めてしまったらシリウスに溺れる。シリウスがいなかったら僕はだめになってしまう。

「ルーピン」
とスネイプは僕を呼ぶ。
顎をしゃくる彼の視線の先には箒に乗ったシリウスがいた。
小脇に袋を抱えている。
「律儀な男だ」
呟くスネイプは、あやつはあの時、透明マントを着てお前のすぐ前に立っていたと、驚くことをいった。
誰か通りかかったらマントの前を開けてお前を隠すつもりだったらしい。
「それに気づいたのは私でなくジェームズだがな」
まさかあんな姿でお前がいるとはジェームズも気づいていなかったろうと付け加える。

じゃあ、スネイプたちは僕たちに見られていると知ってて?

「……なぜだろうな……お前たちに見られていると気づいていたのに、だからこそなのか……」
つい、見せ付けてやろうと思ってしまってな……。
はにかみ笑ってスネイプはいった。
「愛する人がいて、その人にこの上なく丁重に扱われるのは幸福なことだ」
幸福で、眩暈がするようなすばらしいことだ。
「お前にもそれを味わう権利がある……ぜひ味わってもらいたい」
私にそれを教えてくれたお前に幸せになってもらいたい。
スネイプはシリウスを見つめたままいう。
「ルーピン。あいつは粗野だが悪い奴ではない。お前を愛しているんだろう。それゆえ腕に抱きたいと欲する。唇で愛をささやき、愛撫したいとねがうのだろう」

お前に拒絶されることをブラックは最も恐れている。

「私が言うのもおかしいが、求めているのに求められないというのは……とても辛いことだ。ましてお前たちはお互いを思いあってる」
「僕はシリウスが好きで……彼が」
望むなら、体くらいいいと思う。
でも。
誤って噛み付いてしまったら……。
「病気は、防護策を講じればいい」

おまえの体質を言い訳にしないでくれ。

シリウスに言われた言葉がよみがえる。

言い訳。言い訳ってこういうことなんだろうか?
今僕がぐずぐず考えている……これこそが言い訳なんだろうか……。

「ルーピン。お前にこれをやろう」
スネイプはどこからとも無く箱を取り出した。
「私が編んだレースの手袋だ。ジェームズのために編んだんだが…彼にはサイズが小さい。お前が使うといい」
そうしてスネイプは窓を開きシリウスを招き入れる。
いきなり彼の頬に平手打ちを食らわせると、これはルーピンの代理としてやるのだから、お前は甘んじて受ける義務があると言い放った。

シリウスはああそうだなといい、反対側の頬をスネイプに向けこっちも殴るか?と訊ねた。


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