◎ call ◎
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シリウスが僕に『おまえをその気にしたら』宣言をした頃、ジェームズは原因不明の体調不調で医務室の住人になっていた ピーターは、二学年下のレイブンクローとハッフルパフの女の子二人と付き合っていて(三人で清いお付合いをしていた)部屋に滅多に帰ってこなかった。 僕とシリウスは二人きりのことが多くなった 彼は普段はいつものシリウスだった。 時々あの目で僕を見る以外は。 服の下、まだ見せたことのない体の線を撫でるように見ている。 頭の中で一体僕は何をされているんだろう、何をさせられているんだろう……そう思う瞬間だけ居心地の悪さは感じたけれど、特に何かをされることは無かった。 ジェームズの不調の原因を聞きだしたシリウスはそれが恋わずらいだと知ると、苦しい恋をしているジェームズに何とか決着をつけさせてやりたいと言っていた。 ジェームズもそれを望んでいる。 ただ、相手はスネイプで、一筋縄では行かないことを嘆いていた。 「絶対スネイプもジェームズのこと、嫌いじゃないはずだ」 シリウスは言う。 確かにスネイプは、ジェームズのことをすごく誤解しているふしがある。 ルーピン騙されるなと、スネイプは心配そうな顔で忠告してくれた。 ジェームズに対して取り付く島がない。 「だから」 とシリウスはジェームズがするようににやりと笑って言った。 「俺たちが橋渡ししてやろーぜ?」 ジェームズが呼び出したんじゃ、奴は話すら聞かないでそっぽを向く。だから。 スネイプを呼び出してやること。 好きな人と一緒にいるのがどれほど楽しいか身をもって教えてやろう? シリウスのプランにジェームズもうなずいた。 恩に着るよと友人は本当に色の悪い顔で言った。 最初、弱っているジェームズを印象付けるため、スネイプにジェームズを見せる必要がある。 スネイプの前で僕は倒れることにした。 彼に肩を貸してもらって医務室へ。 ジェームズは丁度眠っていた。 ファンの女の子からの贈り物に囲まれ眠る彼を見て、スネイプは少し思案顔だった。 その夜。 僕は初めて押し倒された。 ピーターは例のごとく女の子たちとデートで、僕は風呂上り、ねまきで、乾かすために髪を解いていた。 ベッドに座ってなんとなく落ち着かない心持ちだった。 ふと、背後に気配を感じて振り返るのと、伸びてきたシリウスの手が僕を転がしたのは同時だった。 何をする!と叫ぶひまも、はぐらかす間も与えられずキスをされた。 最初のキスは痛かった。 彼の犬歯が唇の端に当たって切れたのが分かった。 また、あの、うっとりするような深いキスがもたらされる。 意識が飛ぶ、ぞくぞくと上ってくる悪寒に体の力が抜けそうになる。 シリウスはぐいと僕を仰向かせ切ない色の目で見てくる。 ああ、彼は今寂しいんだ。やりきれないんだとなんとなく分かった。 「スネイプなんかに」 「?」 スネイプなんかに触らせたくなかったと搾り出すように言って、シリウスは僕の胸に頭をつける。 力でシリウスにはかなわない。 体格で完璧に負けている僕は、彼がもし無理やりにでも僕を自由にしようとすれば、抵抗する術は無かった。 シリウスは暫く甘えるように僕の胸鼓動を聞くと、頭を上げ、急に悪かったと体を離した。 手を引き、僕を起こし座らせると、髪を乾かすのを手伝わせてくれと彼は言う。 こちらの返事を待たずにシリウスは杖を出して熱風を作り始めた。 次の作戦は、シリウスがスネイプを連れてジェームズに引き渡す。 ジェームズと僕は二人、スネイプとシリウスを待っていた。 ジェームズはじっと僕の顔を見て、唐突に最近キレイになったなと、意味が分からず問う僕に一時みたいに鋭い雰囲気がなくなったと言った。 ジェームズはシリウスとぐるだ……。 そんな気がした。 そうしたら、ジェームズは実はシリウスにおまえともっと深い仲になりたいから行き過ぎたような行動をとっても知らん振りをしてくれと言われたと告げた。 「シリウスはリーマス、おまえがすごく孤独なのが許せないそうだ」 「?」 「もっと甘えて、わがままを言って、それこそ下僕のようにこき使ってもいいから自分がリーマス、お前の傍にいることを忘れないで欲しいと思っている」 「……」 「シリウスはリーマス、お前のことが大好きだ。見ているこっちがいい加減にしてくれと思うくらいお前が大好きだ。それをおまえ自身は疑ってはないだろう?でも、怖がってるよな?」 シリウスに溺れて、いつかシリウスと分かれることになったら……そう考えている自分の気持ちを見透かされ、どきりとした。 好意を示されると怖くなるのは、相手の期待を裏切りそうな自分を自覚してるから……。 自分は何も出来ない。 シリウスが示してくれる好意に対して何の代価を払ったらいいのか、見当も付かない。 示してくれる数々の好意に自分は何を返したらいいんだろう。 「いいんだよリーマス」 ジェームズは息を切らせながら言う。 「奴がくれるって言ってるんだ。貰っとけばいいんだ。貰ってやることでそれでシリウスは満足する。シリウスはお前と、感情を共有したいんだ……」 ジェームズはしゃがみこむ。 脂汗を流しながら苦しそうに眉をひそめる。背中をさすると大丈夫だと笑う。 「緊張してきた」 一言言って深呼吸をする。そしてジェームズはゆっくり立ち上がりあちらへ視線を向ける。 シリウスと、スネイプがやってくる。 「これは一体どういうことだ?」 シリウスに連れられ、現われたスネイプは憎々しげにジェームズを睨みつけ言う。 「非礼は詫びるけど、こうでもしないと君は来てくれないと思ったから」 言葉に詰まるジェームズに変わり僕は答えた。 シリウスはジェームズの肩をがんばれよと言う風に叩き、僕の腕を引いた。 あとは、ジェームズとスネイプの問題だ。 「奴が踏ん張ればきっといい方向に転がるさ」 かみしめるように、祈るようにシリウスは言う。 その日、ジェームズは鼻歌を歌いながら帰ってきた。 顔色も良くなり、すっかり痩せてこけてしまった頬をばら色に染め『スネイプと友達になった』と嬉しそうに言っていた。 翌日からジェームズは落ちた体力を回復させるため食事を取り捲った。 スネイプはなんともいえない顔をして、こちらのテーブルを見やり、こっそり僕を手招きして瓶に入ったグレープフルーツジュースを差し出しみんなで飲めとぶっきらぼうに言い放った。 ジェームズはスネイプに呼び出され度々出かけてゆく。 そうしてシリウスと二人きりの時間が増えてくるとシリウスはだんだんと大胆になってきた。 ピーターが居ないときはこちらのベッドにもぐりこんでくる。有無を言わせてくれる雰囲気ではなかった。 あの目で見つめられ、すぐ間近に感じるシリウスの体温に体中の血がふつふつと沸くような感覚に襲われる。 気が遠くなるような、吸い込まれるような感覚。 シリウスの視線が唇を、首筋を、胸元をすべり、ねまきの中に落ちてゆく。 体の線を視線でなぞられ身もだえする……。 裸にされているわけではないのにそうされている感じがする。 髪を撫でられるだけで呼吸が乱れる。 シリウスは笑って唇にキスを落とす。 「きもちいいか?」 耳元でささやかれ、沸く血の感覚が煮立つように激しくなる。 多分僕の顔はいま真っ赤になっているはずだ。 シリウスは微笑み、きもちいいみたいで俺は嬉しいよとささやいてくる。 シリウスは強くもなく弱くもなく、でもしっかりと僕を抱きしめてくる。 包まれる暖かさと許されていると感じるこの暖かさに涙がこぼれそうになる。 もう一度シリウスは耳元でささやく。 「許してくれればもっともっと気持のいいことをしてやれる」 「……」 体中がぞくぞくする。 泣き出しそうに苦しい。 苦しくて、熱くて、熱くておかしくなりそう。 「俺を信用して、許すっていってくれリーマス」 「……」 すぐ傍にシリウスの首筋がある。 皮膚の下がかすかに脈打つ……太い血管を感じる。 その脈打つ動脈に尖った歯を立てたら……? 歯を立てて食いちぎらない程度に軽くそっと力を込める。 力強い拍動が歯から上顎を通り、脳の奥にまで伝わる。 暖かい命、脳の奥まで響く命の響きを、自分以外の優しい命の味を歯で感じることが出来る。 「ああ」 全身の血がわっと熱くなった。 「……うう」 思わず身震いした。 心臓の鼓動。皮膚の下を通る血管を流れる血の暖かさと匂い。 髪を撫でられ背中に起きた寒気に思わず息を吐き出す。 内股を撫でる感覚に我に返るとシリウスの視線がつま先のほうへ降りていくのが分かった。 ゆっくり微笑みシリウスはもう一度、気持ちよくなると変化をする場所に視線を据えた。 「……」 特に変化はないはずだ。 しびれるような鈍い痛みを僕は感じているけど、目で見て分かるほど変化はしていないはずだ。足をよじって体を返す。 シリウスはくすりと笑い声を漏らしもう一度深いキスをしてくる。 最初のときより唾液が甘い気がした。 それは、白いランの花を連想させ、思わずため息が漏れた。 匂い。甘い花のような芳醇な匂い。 「……」 しびれる。 ぞくぞくする。 そして熱い。 ああ、こんな目に合わされるくらいなら、触られてもいないのに、ただ見られているだけなのに、気持ちよくなってそれがバレるんじゃないかと、冷や冷やしている位なら……。 裸に剥かれて部屋の外に放り出されたほうがまだ恥ずかしくない。 |
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