◎ white heart's (ホワイトハーツ) ◎
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改めて、友達とは何をするものなのか具体的に考えてみた。

そして、一緒に何かをするのが、一番手っ取り早いと、考えた。

「ポッター、明日、森へ薬草を摘みに行く一緒に来ないか」
「ごめん、明日はクィディッチの練習があるんだ」
「……そうか」
「……午前中だけだったら大丈夫だけど?」
それでもいいなら一緒に行ける。
変哲なく交わされる会話。

朝の四時に起きて学校裏手に広がる森を歩く。
すぐかたにはくろぐろと禁じられた森が広がる。入森を禁じられた生徒としては、この森と、あの森が交わる地帯にこそ用事がある。
この時期、この時間にはふうれい茸という、アスパラガスに似た茸が生える。
半分寝ぼけた顔のポッターと共に群生地へ行き、かご一杯摘んだ。
ずしりと重いかごを、浮遊魔法を使い運ぶ。腕に来る重さに成果を見て取り自然と微笑が浮かぶ。
ポッターは何も言わず、ただ微笑む私をみて、微笑む。

君は、本当に楽しそうに薬草を採るんだねと、うっとりするような微笑を浮かべ言った。

それから一緒に何度か薬草摘みに行った。

薬草摘みは時間との勝負だ。
特定の時期に特定の場所へ行かねばならない。
私は、自分では気が付かなかったが、容赦なくポッターを酷使した。
朝の四時、深夜一時。昼日中から夜中まで呼び出してずっと穴掘りをさせたこともある。

常識を超える時間、奴の生活を無視した私の一方的な呼び出しに、ポッターは二ヶ月は黙って付き合った。

そして、二ヶ月目のあるとき、夜十時に呼び出した私にポッターは、君は俺を下僕か何かと間違えてない?と言った。

「俺は友達になりたいって言った。でも取り巻きや下僕になるつもりはないよ?きみは友達をそういう風にあつかうんだね?」
咎めるでもなくポッターは淡々と話す。
その目は明らかに怒っていて、私はその時、自分が優位な立場に居るという自覚のあまり暴君になっていたことに気が付いた。
「俺の都合も考えて欲しい。それから、君が楽しいことと俺が楽しいことは、ちょっと違うってことも知って欲しい」
「それはもう私の誘いはいらん、ということか?」
「ちがうよ。薬草摘みはいろんなことが出来て楽しいから、また行ってもいいとは思うけど、今度は俺の誘いにも乗って欲しい」

今週末はホグズミートにいこう?

「あんな騒がしく、人だらけの場所に?用事が無ければ行きたいとも思わない」
「今ホグズミートに移動映画館が来てるんだ。マグルの世界では名作らしいよ」
「……映画……」
「たまには、自分以外の人間が、何で楽しいと思うのか経験してみるのもいいと思うけど?」
「……」
「それに予報では来週末は雨だよ」
「……」
「たまには俺につきあってよ」

ポッターの言葉はもっともだと思った。

週末。
私とポッターはホグズミートにいた。
サーカスを思い起こさせる巨大なテント。
中は、オーナーが趣味で集めてきたと言う映画フィルムの展示も行われていた。

なんというか、マグルの映画はこちらの写真だった。
ひとつ違うのは音声が付いていると言うこと。
用意された席に座ると、なんと二列前に見慣れたあたまが……。
シリウス・ブラックとリーマス・J・ルーピンだった。
ルーピンはこちらを振り返り手を振る。
その時、何か陰謀のようなものを感じた。
席を立とうとした瞬間会場内の照明が落ち映画が始まった。

映画は「ローマの休日」というものだった。
身分違いの男女が、歴史ある町で一日だけ恋人のように振舞うというもの。
物悲しく、美しい映画。
ふと見ると、前方のブラックとルーピンの影が不自然に接近している。
あ、と思った、瞬間的に、奴等は口付けをしあっていると感じた。
よく見ると会場中のほとんどの影が、男も、女もみんな寄り添いあっている。
周り中、恋人同士だらけだ……
映画の中の出来事を自分たちに置き換え彼らは唇を交わしあう。

どきどきした。

その場の雰囲気に。
不用意に動いたらその独特の雰囲気を壊す気がして動けなかった。
とん、と、肩に何が当たった。
ジェームズ・ポッターの頭。
こちらの肩に頭をのせかけ、奴は、エンドテロップの流れ始めた画面を、見せられたように見ている。
手を、触られた。
奴が何を考え、望んでいるかが分かった。
そっと視線が私を捉える。
どきりとした。

私は、奴の目に、奴の目に映る銀色の光に捉えられ動けなかった。瞳の中に先ほどの結ばれなかった男女と同じ切ない色が見て取れた。
そっと眼鏡を外しポッターは顔を近づけてくる。
頬骨に奴の唇があたり、かすかに音を立ててはなれてゆく。

どきどきした。

惚けたように私を見つめるポッターの表情には、なんの邪気もなかった。
暖かくやわらかい唇が、こちらのものに触る。
反射的に目を閉じた。

自分の心臓の音が耳の裏を打っている。
体中がしびれたように、なる。
味わうように、いつくしむように、そっと優しくポッターの唇が触れる。

ああ、なんだろう、この感じは……。
体の力が抜けていく。
奴の腕がそっと私を抱きとめ、力のはいらない頭をゆっくりと奴の肩に持たせかける。

「もう一回見よう……」

静かに告げるポッター。
私は頷く。ルーピンとブラックは先に帰り、客の入れ代わり、始まった二度目の映画に、私は涙した。


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