ムーニームーン 
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見てしまったルーピンの秘密を、シリウスはどう扱ったらいいのか良いか悩んでいる様だった。
もともと無口だが更に無口になったシリウスを前に、ルーピンは悟ったようだ。
顔を合わせると二人の間にはぴりぴりとした緊張が走る。
ピーターは怯え、“闇魔防”の教科書を抱えうろうろオロオロしている。
放課後の図書室でピーターに水魔退治の方法を教えながらジェームスは胸の中でつぶやく。

とんだとばっちりだ。

何があったか大体の想像はつくが、こうなるなら、本人が自分の意志で話してくれるまで待てばよかったんだ。
向かい合ってはいるが微妙に相手を無視しながら宿題をするシリウスとルーピン。
会話は自分かピーターを通して行われ、鬱陶しいことこの上ない。

シリウスは覗き見したルーピンの秘密を扱いかねている様に見える。
まあヤツのことだからあと三、四日以内にかたをつけるだろうが、それまでこの怯えたピーターのお守はごめんだ。

うまい具合にこの辺で何かきっかけがあれば……。

「これはこれは、誰かと思えば‐‐‐」

一度聞いたら忘れられない、気取った声がした。
「相変わらず、ポッターの腰巾着かな?ペティグリュー」
ピーターがあからさまに顔をしかめる。

カモがねぎ背負って鍋持って水持ってやってきた。

ジェームスは顔がにやけるのを止められなかった。

「やあスネイプ」
ルーピンがにっこり微笑み挨拶する。
「相変わらず沢山のお供に囲まれてるね」
「いや、ルーピン。この前よりも少し減っているぞ」
シリウスが受けからかうように続ける。
「ついて来てもらわなくても一人でいける教室が増えたんだ」
「口の聞き方に気をつけろブラック!」
黙っていれば美しい顔をゆがませスネイプはシリウスをルーピンをそして自分をねめつける。
「まあ、いい」
キューティクルの美しい黒髪をかきあげ、後ろのスリザリン生に合図する。
「落し物だポッター」
汚物を扱うようにレースで縁取りされた白いハンカチで端をつまみ彼は、皮張りの教科書をぽいっと放った。

“闇の魔法に対する防衛術”

「‐‐‐‐」
無言でシリウスが立ち上がる。
ルーピンが机の向こうからシリウスの腕を掴み踊りかかろうとするのを止めている。
「ああ、探してたんだ」
さりげなくシリウスとスネイプの間に割り込む。
「ありがとうスネイプ」
「‐‐‐‐」
素直に例を言うとスネイプは一歩後ろに下がった。
そしてそんな自分を恥じたのかことさらに胸を張り顎をあげた。
“かわいこちゃん”
声に出さず、唇を微かに動かしジェームスは言った。
「この前の合同授業のとき、何時の間にかなくなってて、困ってたんだ」
「私が、盗んだとでも?」
「いや、そんなことは思ってないよ。キミが、俺の教科書に用事があるわけ無いしね‐‐」
いいつつ、ジェームスはぱらぱら教科書をめくる。
「あれ?これは?」
ページの間から出てきたものに、ジェームスは声をあげる。
それは紫の蝋封のされた白い封筒。
「ラヴレター?」
ピーターがつぶやく。
良いタイミングだジェームスは心の中で呟く。
顔を上げると、ルーピンがシリウスが“了解” とばかりに瞳でうなずく。
「まさかスネイプ君の?」
「馬鹿なことをほざくなリーマス・ルーピン!」
「そうかとうとう…ラヴレターをもらうようになったか」
「それは私ではない!!」
「スネイプきみの‐‐‐」
「私はジェームス・ポッター、貴様なんぞに恋文を送る趣味はない!!」
「きみのだ」
手紙を差し出しジェームスは繰り返す。
「だから、きみのだってば」
「まだいうか」
スネイプは真っ赤になりながら怒鳴る。
司書の先生が肩を怒らせる。
軽い咳払い。しぐさで静かにと促している。
ここらが塩時だとジェームスは思う。
「だから、きみあての手紙だよ」
「ばかを‐‐え?」
宛名をさらしジェームスはもう一度言ってやる。
「この手紙は、君あてだよ」
「…………」
周囲を見回しスネイプは漸く、自分が図書室では大きすぎる声で話していたことに気付いた。くすくす笑いがどこかであがった。
「はめたな、ポッター……」
「言いがかりだ」
シリウス。
「そうだそうだ」
ピーター。
「覚えていろ!」
手紙を引っ手繰りスネイプは足音も高く図書室を後にする。
「悪いやつだなジェームス」
「言いがかりだよ」
くすくす笑うシリウスにジェームスはルーピンばりの笑みを浮かべた。


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