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「……」 はしごを降りていくジェームズを見送りながら、ルーピンはやられた、と思っていた。 シリウスがふさぎ込んでいる原因は一週間まえのあの台詞だと分かっていた。 『抱かせてくれ』は、結構、衝撃的だった。本当は『抱きしめさせてくれ』か『抱っこさせてくれ』のつもりだったんだろうけど、その言葉が耳に飛び込んできたとき、頭に血が昇った。 彼の気持ちは十分すぎるほど感じていた。でも、態度でのアプローチはされていたけど、言葉で示されたことは一度もなかった。 スネイプとぶつかってシリウスが受け止めてくれたとき、いつもならすぐに離れていく手がするりと体の前に回った。まずい、と思った。 きっぱり言わせて、振らないといけない。 シリウスはブラック家の跡取りだし、自分の持ってる体質では色々障害多い恋愛になってしまう。 人狼の自分は、本当なら専門の施設に入れられ、閉じ込められるはずだった。 でも、今僕はホグワーツ魔法魔術学校に入学している。 人狼と知っても態度の変わらなかった三人の、大事な友達がいる……。 これ以上の一体何を望む? さっきまではそう思っていた。 談話室でピーターの宿題を手伝っていて突然呼ばれた。 行ってみると、ジェームズとシリウスが胸倉を掴みあって殴り合いをはじめるところだった……。実際は違っていたけど……。 それから後ははしごの途中で、二人の話を延々盗み聞きすることになった。 シリウスの話を聞いていて、胸が熱くなった。 本当はジェームズにシリウスの背中を押し、告白するように仕向けてもらって、そうしたら断るつもりだった。でも……。 「あの、ルーピン……」 シリウスがしどろもどろ声を掛けてくる。 「なに?」 「……」 多分、今僕は笑ってるんだろう。 強張っていたシリウスの表情が一瞬で『ほっ』としたものになる。 「……ゴメン……あの、みんなに心配かけて……」 「……そうだよ、ピーターがもう大変だったんだから。『ボクなにかしたかな、シリウス何怒ってるんだろう』って」 シリウスはしゅんと萎んで、もう一度ゴメンといった。 「俺、変なこと言ったから、お前に嫌われたって思ってた」 「うーん、ちょっとびっくりしただけ。……でもいきなり『抱かせろ』なんていわれたら誰でもそうなるよ……。それって、『エッチしよう』ってことにも使うから……」 「そ、そんなつもりは―」 シリウスは激しく首を振りながら真っ赤になって否定する。 「ただ俺は……抱っこ…したかっただけなんだ……俺、お前が……好きだから!」 「……」 「好きだ、リーマス・J・ルーピンっ、俺が嫌いじゃなかったら……付き合ってくれ!」 「……」 「―」 「……」 「……あの……返事すぐじゃなくていいから」 「……分かった……少し待ってもらえるなら」 「……ああ、待つ」 ほうと息を吐き出してシリウスはとても優しい顔で笑った。 つられてルーピンも笑っていた。そして彼はほとんど無意識に両手をシリウスに伸ばし言っていた。 「はい」 「え?」 「抱っこしたいんでしょう?」 「……う」 言葉につまりシリウスは首だけ激しく頷かせ、返事した。 「抱っこだけだからね?」 シリウスはひざまづき、恐る恐る、震える両手をルーピンに伸ばした。 そうっと包み込むとぎゅっと、少し強めに抱く。 ……まずい。 これって、OKって言ってるようなもんだった。 でも、いいか〜〜 シリウスの首に手を回しつつルーピンは思っていた。 |
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