◎ 花と愛 ◎

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スネちゃまは花がすき。
自宅の城には自分専用の花壇があり、魔法薬で使う薬草と一緒に大事に大事に育てていた。
ホグワーツに入学してからは、屋敷しもべ妖精のフランチェに丹念に丹念に世話させている。

花は何でも大好きだ。特に一番薔薇が好き。

薔薇は高貴だ。
気高く咲いて美しく散る。
幾重にも重なった花びらはビロードのレースを思わせる。
花びらの間に浮かぶ朝露は甘く、薔薇の可憐さ、愛らしさを引き立てる。

ホグワーツ闇の貴公子とよばれ、スマート&エレガントをもっとうとする私にふさわしい花はこれ以上はない。

だからいつも、スネちゃまはいつも薔薇を抱えている。

彼が苦労に苦労を重ねて開発した『薔薇ちょこ』。
特殊な土にタネをまいて育てるとチョコの花を咲かせる薔薇。
父親から『商品化して年ン%のロイヤリティー収入をもらえる信用できる会社を紹介してやろう』と言われ(契約書をもってこられ)たがそんなことはしない。断った。

これは一人で、もしくはいとしい、かわいい人と楽しむものだ。

それに金などに固執するのは、私にふさわしくないことだ……。

傾きかけた名門貴族の家に生まれ、ムコ養子の父の魔法薬の発明、売りコミの才能に救われ勢いを取り戻したスネイプ家の次期城主・セブルス・スネイプは、自分の考えにすこーし疑問を感じながら、それでもそう思っている。

薔薇をめでながらスネイプは、うっとりする。

花は、いい。

心が和む。

温室の窓辺、置かれた鉢植えの薔薇をうっとり眺めるスネイプを、少し離れたところからシリウス、ピーターは気味悪そうに、ルーピン、ジェームズはお互いに顔を見合わせ眺めている。
「なにかはなしかけているよ……」
ピーター。
「相変わらず、雅と言うか、きわいというか……俺には理解できない趣味もってるな〜〜〜」
シリウスは移植こてを地面にさす。
ルーピンは指に巻きつこうとするたてがみつるをやっぱりこてで威嚇しながらジェームズに言う。
「スネイプは花が好きなのかな?」
「そうみたいだな」
にっこりジェームズは笑う。
「特に薔薇が好きみたいだ。この間から窓辺に寄って、違う鉢の薔薇をとっかえひっかえ眺めてる」
「ふーーん」
興味なさそうなシリウスの横で、威嚇の甲斐なく指に巻きついたたてがみつるをひっぺがしながらルーピンは訊ねる。
「いつもスネイプを観察してるみたいだけど……何か気になること、あるの?」
「え??ジェームズ、スネイプに気があるの?」
ルーピンのために杖の先で火を起こしたピーターは、切れ切れに聞こえたルーピンの言葉につい大きな声をだす。
「……ははは……ピーター、激しい聞き間違えだな……」
乾いたシリウスの笑い声が響く。
ジェームズはピーターの問いには答えず、ゆっくり目だけ動かしスネイプを見やる。
薔薇に魅入っていた優しい顔のスネイプは消え、いつもの氷のような面差しの彼が薔薇の鉢を背に隠し、じぃいいいいとこちらを見ている。


おのれポッター、また私のうわさだな……。
今度は何だ……!まさか私のこの薔薇を狙っているのか?

いとしい人(学校中から選抜中)と楽しむためのこの薔薇を、ポッターなんぞにくれてやるものかっっ

スネイプは反射的にはさみを取り、もうすぐ咲く筈のつぼみの薔薇をちょきーーーーんときった。

ふ、思い知れポッター。

スネイプは満足そうな笑みを浮かべ、そのままきびすを返すと温室を後にした。

「……」
スネイプが去ったすぐ後、ジェームズはゆっくり窓辺により、地面に転がる切られた薔薇を拾い上げる。
「ジェームズ……」
切られた花を鼻に押し当てるジェームズにルーピンは声をかける。
「ごめん……ボク、わるいこといちゃったみたいだね」
ションボリするピーター。
ジェームズは微笑みながら気にするなというが、ルーピンには相当なダメージを受けているようにみえた。
「……なんで、嫌われるんだろうな……」
一瞬だけ悲しそうな顔をしたジェームズに三人はかける言葉がなかった……。

(終)


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